過去の入賞論文
・2016年(第17回)
・2015年(第16回)
・2014年(第15回)
・2013年(第14回)
・2012年(第13回)
・2010年(第12回)
・2009年(第11回)
・2008年(第10回)
・2006年(第8回)
・2005年(第7回)
・2004年(第6回)
・2003年(第5回)
・2002年(第4回)
・2001年(第3回)
・2000年(第2回)
・1999年(第1回)

































































































2014年(第15回)

【特別賞】
〜人的・物的安全に考慮した数年後見ても作業可能な手順書〜
沖縄工業高等専門学校 機械システム工学科 5年
松永 啓詳
松永啓詳

1.はじめに
 日本はこれまでに世界に誇れる様々な技術や知識を使って、数多くの精密機械生み出してきた。この素晴らしき技術や知識が詰まった精密機械を後世代へ受け継ぐためにも、手順書もしくは説明書というものが必要になってくる。もちろん、精密機械自体は年々アップグレードされるので、中には手順書を残す必要がないだろうと意見も出てくるかもしれない。しかし、私が目指している手順書の目的というのは、後世代の人たちが同じ機械を作ることではなく、その素晴らしい技術を別のことに応用してほしいと願っている。そこで、今回インターンシップでお世話になった株式会社牧野技術サービスさんでの実習を生かして、“人的・物的安全に考慮した数年後見ても作業可能な手順書” について考察し、その方法について提案する。

2.手順書を製作するにあたって
 順書を作成するにあたっての最大のポイントは、2つある。1つめは、“人的物的安全に考慮した”という部分で、2つめは、“数年後見ても作業可能な”という部分である。
 まず、1つめのポイント“人的物的安全に考慮した”について説明する。人的物的安全に考慮するということは、簡単に言うと、作業者が手順書に従えば、怪我をすることなく、無事その物を作ることができるということである。つまり、人も物も安全であるということが条件である。
 次に、2つめのポイント“数年後見ても作業可能な”について説明する。数年後見ても作業可能なということは、いま私たちが当たり前に行っている事が、数年後通用するか否かは定かではない。例えば、私達が普段利用している携帯電話も数年前までは、ボタン形式が主流であったが、最近では、画面に触れることで操作ができるタッチパネル形式の携帯電話スマートフォーンが主流になってきている。このように、いままで私たちが当たり前に行ってきた事が、後世代の人たちにとって当たり前ではない可能性が十分に考えられるのである。そのため、手順書を作成するにあたって、機械の知識を全く持ってない人でも、手順書をみれば全く同じ作業ができるということでもある。

3.手順書の記載例(K型汎用フライスの分解・組立て)
 
@オーバービューの貼り付け(図1) 
人は文字を見て理解するよりも、イメージ図があった方が理解しやすい。そのため一番初めにオーバービューを表示し、ある程度イメージがつかめた状態で作業を開始することで、スムーズに作業を続けることができるようにする。
A使用工具の表示
予め使用工具を表示しておくことで、作業者がニ度手間をしなくて済む。機械によっては、一度に同じ工具を2つ使うこともあるので、いくつ必要なのかも記載しておくとよい。また、数年後全く同じ工具が使用されているとは限らない。つまり、この時点で作業可能かどうかが分かり、その工具がなければ、工具を発注もしくは作成することができる。
B機械に関する知識の追加(図2)
手順書に機械に関する知識を加えることで、作業を安全かつスムーズに進めることができる。また、機械の知識を全く持ってない人でも作業を行うことができるようにする。 
C作業手順は箇条書き
だらだらと文章を書くよりも、シンプルかつ簡潔に書いた方が伝わりやすい。そのため箇条書きで記載する。1つの作業に対して、1つの説明文がベストである。
Dポイントやアドバイスの追加(図3)
具体的にどれぐらい必要なのか、定量的に記載する。また、実感もしくは実体験などがあれば、擬態語、擬音語などを使って表現すると分かりやすい。また、どうやったら作業がスムーズに進むのか、次回の作業に活かすためにはどうしたらよいのかアドバイスがあれば更によい。
E危険個所及び注意事項の記載(図4)
 作業するにあたって危険だと思われる点や、注意すべき点を記載する。
Fチェック項目の追加
人間は必ずミスを犯す生き物だ。ミス・トラブル削減する目的として、チェックリストを作成する。チェックリストを記載することで、作業の確実性を計ることができる。
 






4.手順書完成に向けて
 手順書がひと通り完成したら、一度機械の知識をまったくもってない友達や知人に見てもらうとよい。彼らが理解できたのであれば、この手順書は完成に一歩近づけたと言えるであろう。仮に理解できなかった場合、もう一度見直すことが必要である。見てもらった人から具体的に何がどう分からなかったのかなどをアドバイスしてもらい、それに沿って作成すると、更によい手順書ができるであろう。

5.完成した手順書の管理
 日本の素晴らしい技術が盗作されて別の事に使用され、テロでも起こされると大問題に発展する。そのため手順書の管理については徹底しておきたい。仮に手順書を社内で共有するために、データとしてディスクに保存する場合があるが、データが流失しないようにパスワードなどをかけておくことも大切なことである。また、この手順書が皆に共有してもよい手順書であるのなら、特許や著作権などを申請し、予め権利を取得しておくことも大切である。手順書が完成して新たに間違いや、さらによい方法があることに気が付くかもしれない。その時は、手順書を更新することをお勧めする。その際に、更新日時及び誰が修正したのかもはっきりさせておく必要がある。

6.最後に
 この手順書の目的は、あくまでも日本のすばらしい技術と知識を後世代の人々へ残すためのものであって、決して技術や知識を盗作させるためのものではないことを再確認して頂きたい。昔使われていた技術が、現在になって再び使用されることは皆も知っていることであろう。例えば、ゼロ戦の技術である。三菱重工業が戦前の航空機の製造技術を最新の技法で現代の自動車部品によみがえらせた。エンジンの軽量化や燃料効率向上につながる傘中空エンジンバルブの加工技術である。このように“人的・物的安全に考慮した数年後見ても作業可能な手順書”というものはこれから先絶対に必要になってくると考える。昔から日本は他国に比べて資源が少ないことが分かっていた。また、2011年には東日本大震災が起こり、日本の経済に多大な影響を与えた。日本の経済を発展させるためにも、多くの企業や研究者達が残してくれた素晴らしい技術や知識が必要だ。その技術や知識を使わないのは非常にもったいない。先人達が残してくれた技術や知識を使って、新たな製品を作り、社会貢献する事は非常にすばらしいことである。今の日本が持っている素晴らしい技術や知識が、将来別のモノとして応用され、さらによい製品を生み出すことを私は期待している。我が国のさらなる発展と活躍に貢献できることを期待する。

謝辞
 本論文を作成するにあたって、インターシップの実習で指導して下さった香村章夫社長をはじめとする株式会社牧野技術サービスの皆様に感謝の意を表する。また、手順書を作成するにあたって、一緒に作業して頂いたインターシップ生の和田さん、安藤君、薄鍋君に感謝します。

参考文献
日本経済新聞 2014年2月3日(閲覧日:2014年7月14日)
経済産業省 資源エネルギー庁(閲覧日:2014年7月16日)
http://www.enecho.meti.go.jp/