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2014年(第15回)

【優秀賞】
まちのなかが教室に変わる『まちなか教室』
沖縄工業高等専門学校 メディア情報工学科 5年
友利 萌
友利 萌

1.はじめに
 恥ずかしながら、私は工業高等専門学校に入学するまで、理科分野にあまり興味を持つことができなかった。入学以来、学校ではプログラミングと、それに必要な知識としてコンピュータそのものや関連技術についての基礎知識等を学んできた。そうしていく中で、「日常生活のありとあらゆる身近なものに科学技術が用いられており、その技術を使って世の中を便利な方向に導いてきた人々がいる」ことに気付いた時は、非常に大きな感動を覚え、理科のみならず全ての「ものづくり」及び科学技術に対する関心が非常に高まった。服や家電、口にする食べ物、街を走る自動車や建物のドアまで、科学技術で一つの街を作ることも可能だとさえ考えることができる。今考えてみるとまさに当たり前のことではあるのだが、小中学校時代その実感がなく、この時代に「あって当然」だと思っていた技術の中で暮らしてきた私にとって、それは大きな衝撃となった。そして、その衝撃をもっと早くから感じていれば、理科分野への興味が高まり、学習意欲が向上していたのではないかと考えている。
 本稿では、以前から問題となっている若年者の「理科離れ」の原因を、特に小学校での理科学習の現状から考察し、その解決策として、街全体を子どもたちの「科学体験教室」ととらえた上で、子どもたちが普段から暮らす街の中で科学技術のしくみを知る機会を生みだすことについて提案する。

2.「理科離れ」の原因を考察する
 若者の「理科離れ」が叫ばれて久しく、その傾向と対策については未だ各人が様々な論を述べている。
 文部科学省により、平成23年度以降「学習指導要領」が大幅に改訂された。小学校理科については、改定後の学習目標として、「実感を伴った理解を図る」という点に、より一層重きが置かれるようになっている 1)。具体的には、既存の学習範囲の中で実験や実践活動を推奨する内容が見られるようになり、新規の学習項目としては、身の回りの事象との関連を踏まえた内容を取り入れるなどしている。また、毎年行われている学習調査の科目として「理科」を追加することも検討されており、技術大国としての日本の技術力を活発化そして維持し続けるための教育に、国を挙げてより一層力を入れていることがわかる。
 しかし、理科離れの原因そのものについて分析され論じられているのを見かけることは少ないと感じる。ここでは、「理科離れ」の原因を考察し、以下の2項目に大別して論じていくことにする。

 2.1 「作業」としての実験
 理科の授業の中では、さまざまな現象を実際に体験する一つの方法として、道具を用いた実験を行う。その実験を楽しんで行う子どもたちも多い。しかし、それらの実験は、「まず手順を覚え、その手順通りに道具を扱えば、予想通りの成果が得られる」といった至って単純なプロセスを経て行われることが多い。 
 また、実験に使用される道具は児童生徒には見たことのないものであり、その使い 方をテスト等のために覚え、一度使ったら忘れてしまうということも少なくはない。結果として、実験から得られるものは「実験に使用する道具と、扱う手順と、それに よって得られる結果」のみとなってしまい、この現状では、実際子どもたちが過ごしている日常生活における事象と関連付けて考える力が身につきにくいと考えられる。

 2.2 「身の回り」にある実感の不足
 文部科学省が定めている「小学校学習指導要領」によると、小学校理科の学習内容として、大まかに「A物質・エネルギー」と「B生命・地球」の2項目が設定され、いずれも自然現象や物理的法則について、実践を通して理解を深めるような内容となっている。特に、現在適用されている「新学習指導要領」では、エネルギーや物の性質、また身近な自然の観察など、学習内容をより身近に感じられるような内容が盛り込まれている。しかし、安全の都合上、校内や学校周辺で済ませることのできる実験や観察をせざるを得ないという現状があり、自らが暮らしている街の中でも多く使われているということを実感する機会が少ないのではないかと考える。
 
 2.3 子どもの「なぜ?」への対応    
 幼年期は、自分の身の回りに起こることすべてに対して「なぜ?」と疑問を向ける ことのできる年代である。探究心のあまり芳しくない人や専門家でない人々は、この世の中に存在する事象について、ごくごく簡単な知識を持っているのみ、もしくは「そういうものである」と完結させがちであり、その先に積極的に迫っていくということをしない。しかし、子どもが生活の中で「なぜ?」とたずねた時に、親が理科の授業で習った内容を事務的に説明するだけでは、子どもは知識を手に入れたにすぎず、実感を伴うことは難しい。それも、「理科」を身近に感じる機会を遠ざける一因となってしまっているのではないかと考える。

3.まちのなかが教室になる「まちなか教室」
 生活における理科教育の機会としては、科学体験イベントヘの参加、科学研究等を行っている施設の見学などがある。しかし、動機がなければ参加しない人がいることや、それらの内容の専門性がやや高いなど、科学への関心を引くには、敷居が高く感じられることも考えられる。
 今回提案したい「まちなか教室」は、その名の通り街の中で展開される「教室」である。信号や電灯、電線などについてのしくみを簡単に解説するパネルを街の中に設置するなどして、「街の中で使われている科学技術」と「理科の授業で習う内容」の関連を示す。また、街には街の各家に残された歴史的なものや伝統道具をオープンに展示する「街ぐるみ博物館」2)の事例を応用する形で、街の中にある店で、子どもを対象として「その店で、またはその店の扱っているもので使われている技術」を解説す るための展示や説明を行う。例えば、自動車販売店では車の動く仕組み、文房具屋では筆記具の仕組み、ケーキ屋さんではお菓子作りや料理を行う際に起こる科学的現象、花屋では植物の種類や構造、などといったことを、子どもを対象として簡単に展示や説明、またはそれを体験できるプログラムを実施する。日にちや時間は店によって調整することができ、先生役は親を始めとする、その街で暮らす大人が務めることとな る。
 このようにして、「街に科学があふれている」のだということを、五感をもって子どもに示すことで、科学をさらに楽しむためのきっかけになることが期待できる。同時に、それまで科学技術に関心をもたなかった大人が、街や生活を動かしている仕組みに興味を持ち、子どもと一緒に考える機会を生み出すことで、理科分野や科学技術への興味・関心を一気に引き出すことができるのではないかと考えられる。また、副次的な効果として、教室を通した住民同士でのコミュニケーションが増加し、地域の活発化による相乗効果で、店の間で、大人たちの間で、子どもたちの間で、大人と子どもの間で、どんどん「教室」が広がっていくのだ。

4.まちのなかから、日本の将来が変わる日がくる
 小中学校時代に理科を勉強していて、「こんなのどこでつかうんだろう」と感じ、苦手意識を持った人は少なくない。その解答例として、「こんなところで使われているよ」という事例を身近な場所で、身近なものを使って体験することで、科学技術や、科学技術が使われたものに対する興味・関心を広げることができ、考え方の広がりや発見力の向上にもつながるのではないかと考えている。そして、将来的に科学技術を使った研究やものづくりの道を志す子どもが増え、「技術立国」としての日本の立場を取り戻すことができる可能性も大きい。ここに示したのは1つの案であるが、これから進歩していく科学技術に対して大人がどう対応していくか、そして、未来を担う子どもたちに科学をどう伝えていくかは、日本の課題であり、勝負どころではないだろうか。

参考文献
1)文部科学省「学習指導要領」
 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/youryou/main4_a2.htm
2)平野の町づくりを考える会「平野・町ぐるみ博物館」
 http://www.omoroide.com/