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2013年(第14回)

【最優秀賞 文部科学大臣賞】
「新しい商品開発のできる「ものづくり技術者」の育成方法」
徳山工業高等専門学校 機械電気工学科 4年
西村 礼貴
西村 礼貴

1.はじめに
小さいころからプラモデルや工作キットが好きだった私は自然と「ものづくり」という分野に興味を持つようになった。そして中学生の頃、実際に「ものづくり」をする高専という学校を知り、進路を高専へと決定した。
「ものづくり」ということを改めて考えてみると、これまで日本は自動車や家電製品などを緻密で丁寧なものづくり力で品質の良いものを安く作り、世界に売ることで産業を発展させてきたのだが、アジアなどの後発国の追い上げで、日本がこれまでのような「ものづくり」のやり方だけでは産業を発展させられなくなってきている。
そのような日本において、大切になってきているのが、日本自らが「ものづくり」の上流側において、新しい製品を生み出し、これらの製品の製造販売の独占権を利用しながら産業を維持発展させていく方法だと思われる。
このような方法を成し遂げていくには、アイデアを生み出す力やそれを特許としていく方法を習得した人材の育成が必要であり、私が入学した徳山高専機械電気工学科は、このような人材を育てるための工夫が、教育の中にうまく取り込まれている。そのため、自然とアイデアを考えたり、特許を取得したりしながら、それがものづくり力の習得に結びつくようになっている。そのことがどのようになされるのか、自分の体験を述べてみる。

2.キャンパスベンチャーグランプリにおける世界で通用するアイデア提案
徳山高専では1年生の時からアイデアを求められる機会が多い。たとえば「創造演習」という授業では自分や自分の周りの人やあるいは世の中で困っていることや、あれば便利というようなものを形にして提案することが求められる。また、キャンパスベンチャーグランプリ(以下キャンパスベンチャーと略記)やパテントコンテストなどの自分のアイデアを提案するコンテストなどへの参加が強く勧められている。
このようにアイデアを考えるという体験を経て3年生の時、私はキャンパスベンチャーに応募しようと考えた。何か面白いアイデアはないかと模索するうちに、友人から海外に行ったとき困ったこととして飛行機には持ち込める荷物の重量制限というものがあるということを耳にした。すなわち荷物が制限を超えると超過料金というものを支払わなければならなくなるのだが、旅行先で運よく秤があるわけではなく、自分の持っている荷物の重さを知ることが難しく困ったということだった。
調査してみると、海外旅行に行く人の数は日本だけで年間1600万人にも及ぶことが分かった。世界中でこの問題に多くの人が悩まされていることを考えると、これは世界の人々の抱える課題ではないかと思い、この解決策を考えてみることにした。
そこで私は、旅行でよく使うキャリーバッグに秤を合体させればよいのではないかと思い、秤の働きをするロードセルというものがあることを知り、これを本体背面につけて、本体表面カバーに表示部を設ける構造を考えた(図1、2参照)。
このような構造であればキャリーバッグを横置きにして、表面カバーを開けて荷物を入れカバーを閉じれば、重さを測ることができ、構造もシンプルで測りやすく、荷物の調節もやりやすいと思い、このような構造を提案した。この提案は幸いにも一次審査に合格し、二次審査の結果、入賞することができた。ふとした友人との会話の中から生まれたアイデアが世界の人々の抱える課題の解決策として評価されたということで、アイデアを考えるという上での自信となる経験であった。

3.特許化作業における実用化のための工夫
キャンパスベンチャーのアイデアは実用性とニーズが高いと評価され、特許化作業に進むことになった。そしてこの作業において実用化という観点から、キャンパスベンチャーに提出したアイデアの見直しも行った。すなわち図1のようにキャリーバッグの背面にそのまま重量センサを設けた場合には、キャリーバッグを横置きにして重量を測る以外にも、重量センサに荷重がかかり続けることになる。これはセンサに不用な荷重をかけて故障の原因になりやすいということが分かったためであった。
そこで特許化においては、キャリーバッグの本体背面にスペーサを設け、重さを測るとき以外にはスペーサによってキャリーバッグが横置きにされたときにも、重量センサに荷重がかからなくすることにし、重さを測るときにはスペーサを簡単な機構で動かして、重量センサに本体の重さが作用する構造とすることにした。(図3参照)
これらの構造を考えるのに時間と図面を書くために苦労をしたが、何とか出願にこぎつけることができ、このアイデアは拒絶理由通知書を受け取ることもなく特許査定を獲得した。私は自分のアイデアが日本で初めてのアイデアであることを認められたと心底うれしかった。

4.創造製作における試作品づくり
これからの技術者に必要なこととしてのアイデアを考え出す力やそれを特許とする経験が求められるわけであるが、当然のことながら実践的なものづくり力が必要であり、そのために多くの専門科目を学んでいる。しかし専門科目を学んだからと言って、すぐにものづくり力が身につくわけではない。実際に専門知識を使って実際に自分でものを作ってみて初めて、ものづくりの力が身につくことになる。徳山高専機械電気工学科では創造製作という授業で学生が作りたいものを作る授業が設けられている。私はこの授業は非常に有効だと感じている。この学校では1年からいろいろなアイデアを考える機会があり、私の場合にはそのアイデアがキャンパスベンチャーで入賞し、さらに特許化も進んでいる。そのアイデアを実際に実現してみたいと思うのは自然なことである。
そこで私は自分の特許アイデアである「重さの測れるキャリーバッグ」を自分で作ってみようと考えた。創造製作にも一応課題があるのだが、それに沿ってマイコンを使って圧力センサで重さを検知し、それを7セグメントLEDで表示するという構造を考えた。そして重量表示ではKgとlb(ポンド)の両方の表示ができるようにした。また特許に沿ってスペーサが動く機構を取り入れて、キャリーバッグを横に倒して測定するときにのみ、荷重がセンサにかかるようにした。(写真1,2参照)
リサイクルショップで見つけたキャリーバッグに重さを測る装置とスペーサの機構を加えた試作機が多少の誤差はあったものの、発表会で正常に作動させることができたときには、大変大きな達成感と喜びを感じ取ることができた。

5.おわりに
低学年からのアイデアだしの機会の中で、友人との何気ない会話の中から、世界中の旅行客が困っているという課題を見つけることができ、さらにそれがキャンパスベンチャーというコンテストの中で評価されたことは、自分のアイデアに自信を与えてくれた。そしてこのアイデアにはニーズがあると評価されて始まった特許化の作業では、実用性という観点からの見直し作業を行い、より改良された構造を考えることができ、特許査定を得て、日本で初めてのオリジナルアイデアと認められてうれしかった。
そしてこれらの経験を踏まえての、試作品づくりはそれまで学んだ専門知識を総動員して何とか試作品を作り上げようという意欲を向上させる上でとても効果的であったと思う。 アイデアを考える力を養い、それを特許にする経験をし、そしてそのものを自分で作るという経験は、これから日本が必要とする新しい製品づくりのできるものづくり技術者を育てるうえではとても良い方法だと、自分の経験を通して実感できた。このような教育がいろいろな場所で進められていけば、日本の産業にも新しい道が開かれるのではないかと考える。