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2012年(第13回)

【入賞】
新分野への挑戦〜介護ロボット〜
熊本高等専門学校 制御情報システム工学科 3年
上山 了介
 

1.はじめに
  家電製品を買うなら”MADE IN JAPAN”という常識が通用しなくなって数年が経つ。かつて世界のトップ シェアを誇っていた日本企業は、中国や韓国の新興勢力に市場を奪われ世界での存在感が薄まってきている。
 いくつもの大手企業が赤字を出してしまい、リストラも行われるようになってしまった。日本のお家芸も今は過去 のことである。しかし、ここで日本企業がシェアを取り戻そうとしても、それはとても難しいだろう。
 この場面で必要なのは、新たな分野に挑戦する勇気なのである。奪われた市場を取り戻すことが困難ならば、 新たに別分野で市場を開拓すれば良いのである。どのような分野に挑戦すべきか、そこで成功するのはどうす ればよいか、自分なりの考えを述べていこうと思う。

2.介護ロボット
  日本は世界一の高齢化社会と言われている。あと数十年もしたら国民の多くが大なり小なりの介護を必要とす る年齢になってしまう。しかし、その人らを若者だけで介護できるわけではない。その足りない部分を補うことがで きるのが、介護ロボットである。また年々増加し、財政を圧迫している社会保障費も介護ロボットの普及により圧 縮できる。このような様々なメリットがあるため、日本では介護ロボットをさらに発展させるための土台があるといえ る。
 では、介護ロボットとは具体的にどのようなものを指すのか。一口に介護ロボットといっても、以下のような様々 な種類がある。介護支援型、自立支援型、コミニュケーション・セキュリティ型など。これらは以下のような動作を 行える。介護支援ロボット―――移乗、入浴、排泄など介護業務の支援。自立支援ロボット―――歩行、リハビリ、 食事、読書など介護される側の自立支援。コミニュケーション・セキュリティロボット―――癒してくれたり、見守り をしてくれる。日本ではこれらロボットを非常に高い安全性を持って実用化できる技術を持っている。これらロ ボットが正式に医療現場で導入されることになれば、介護を行うための人手不足をある程度は解消できるだろう。
 また、ビジネスとしても非常に大きな市場を作り得るポテンシャルを秘めていると考えられており、商業化されれ ば年間売り上げ8兆円が見込まれている。
 しかし、これらロボットが商業化されるためにはまだ乗り越えなければならない壁が存在する。

3.商業化への道
 介護ロボットは、少子高齢化社会にあえぐ日本の救世主になれるし、ビジネスの面でも輸出産業に育てば多く の利益を得ることができる。しかしこの技術を商品に結びつけられていないのが、現在の状況である。商品化す るにあたってまず、介護施設などで性能を確かめる実証実験を行わなければならない。しかし、実証実験には専 属スタッフが必要であり、介護施設には多くの負担がかかってしまう。国は介護ロボットの普及を後押ししている とは言いがたく、このような新しい技術を開発しても生かし切れない現実が立ちはだかっている。
 日本ではこれからさらに高齢化社会に進んでいく。高齢化社会は、確かに数え切れないほどのデメリットがある。 しかし、その未来は避けることはできないのだ。故に、デメリットだけに注目するのではなくこの状況から生じるメ リットを見出さなければならない。高齢者がたくさんいる状況をビジネス的にポジティブに捉えるのだ。所謂高齢 者市場だとか、こういう言い方をするとどうしてもネガティブな印象を与えてしまうが、世界の先進国でも進む高齢 化問題を、日本がビジネスとして成功させリード・マーケットを示すことができれば、そういった印象も変えることが できるだろう。
 そのためには国家単位での支援が必要不可欠である。今持っている技術を最大限生かし、宝の持ち腐れとな らないためにも、予算を組み介護ロボットの商業化に力を注ぐべきだと私は考える。

4.成功の鍵とは
  この介護ロボットを産業として成功させるためには作り放しという大量生産時代のクセを無くさなればならない。 大量生産時代のクセとは、技術や製品を開発してポンと消費者の前に置くだけの古いやり方のことである。このクセがメイド・イン・ジャパンの勢いの低下の原因の一つと言えるだろう。では、新しいやりかたとは何なのか。
 それは先を見据えた取り組み、開発を行うことである。日本と同じく高齢化社会による社会保障費の増大の問題に、国を挙げて取り組んでいるデンマークの介護ロボット開発の過程を一例としてみてみる。アザラシ型の可愛らしいロボットを用いる。このロボットは認知症患者の心を落ち着かせる効果があるとされ、一年前から導入され効果を上げている。一体60万円もするが、国や自治体が負担している。施設ではどのように使えば効果があるかデータを継続してとり続け、実証研究で蓄積される。この蓄積されたノウハウをもとに介護ロボット開発や、介護ビジネスを育てている。このように、製品開発のプロセスに利用者を巻き込み、一緒になって開発をすすめることが必要になってくる。よって開発側が気づけなかったことを気づくことができ、市場に出すときに利便性が拡張され無駄が省かれたスマートなものが出来上がる。これが先を見据えた取り組み、開発である。
 技術的に高水準なことを完成させることはとても素晴らしいことだが、それをビジネスとして世界の市場に出した時、グローバル競争に勝ち残れるかはわからない。世界の市場に出てくる商品はどれも技術的に優れている ものばかりであり、そのなかで勝つためには新時代の製品開発を行う必要がある。

5.さいごに
 現在日本は大きな転換期を迎えている。技術立国としての地位が脅かされ、国の形もいびつになりつつある。 そういったネガティブな要素が多数あることは事実だ。しかし、この状況でも工夫しだいでポジティブな要素を作ることは可能である。与えられた環境から最善の結果を出すことが求められる。そのために時には新しい分野への挑戦も必要である。既存の考えに捕らわれるだけでなく、今までの積み重ねに新たなエッセンスを加えることも大事だ。当然新たな挑戦にはリスクが生じることもまた確かだ。しかし、リスクを恐れ保守的に守りに入ってしまったら、訪れるのはゆるやかな衰退しかない。
 本論文では、新しい分野として介護ロボットにスポットをあて考察を行なってきた。機械と人とが密接に関わり合っている現在、医療の現場でもロボットが活躍するのは時間の問題だろう。その時、介護ロボットの生産国として日本が中心にいるために、未来を見据えた開発に取り掛かって欲しい。そのために乗り越える問題が多くあるのは前述した通りだが、解決のために活発な議論が行われることを望む。若い私達も新たな分野、技術に適応できるように日々知識、能力を身につける必要がある。

【参考文献】
1)

:NHK クローズアップ現代「”高齢先進国”の強みを生かせ」
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3053.html