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2010年(第12回)

【優秀賞】
次世代のために自然から学ぶ環境適応型教育を
新居浜工業高等専門学校 生物応用化学専攻 2年
徳永 龍志郎
徳永 龍志郎

 現在、私達の生活の中で環境問題に関するニュースを目にしない日はない。地球温暖化、生態系破壊、資源の枯渇など挙げていくと切りがない。しかし、太陽光発電やハイブリッドカーなど、環境問題を解決するため考え出された技術も多くある。それらの省エネ型製品を購入することで環境を守るエコブームが社会現象となっている。確かに、省エネ型製品を使うことは環境低負荷のために必要だが、製品を作る、使う、捨てること自体が環境へ負荷を与えることになることを消費者は理解しているだろうか。環境問題を考えていく上で、科学技術の発展は必要不可欠だが、同時に私達の環境問題に対する見方や考え方も変えていく必要がある。

 私達人間は、知識だけで大きく変わることは難しい。周囲の環境、物の見方や考え方が変化することで、初めて変わっていくのではないかと思う。それは、自宅に太陽光発電パネルを取り付けた話を私の知り合いから聞いたのがきっかけである。その家庭では、太陽光発電パネルを取り付ける前は、購入・取り付け費用を回収するために8〜10年掛かることに取り付けを躊躇していたそうだ。だが、取り付けて数ヶ月経過した現在では、発電量や消費量をモニターできることから節電を心が掛けるようになったと言っていた。しかし、簡単に各家庭へ太陽光発電パネルを取り付けることは現実問題として難しく、取付けたからと言って必ずその日から環境意識が向上するとは言い難い。

 私は、学校での教育を変えることが大切だと考えた。最近の日本の子供は「理科離れ」が進んでいると言われている。この「理科離れ」によってもたらされる問題は、科学技術大国と呼ばれてきた日本の技術力が今後低下するのではということだけではない。科学に関する十分な知識を持っていないと、誤った環境対策を進めたり、間違った情報に惑わされる原因となる。私の学校では、広く科学に興味を持ってもらうために、小中学校を訪問し実験を通じて科学に触れてもらうことの出来る出前授業というものを行っている。この出前授業で、小学生に環境問題について知ってもらうことの難しさと興味を持ってもらうことの重要性を感じたことがある。出前授業は学生主体で行い、実験の内容や構成も参加する学生達で考える。私が参加した出前授業は液体窒素を使った実験と地球温暖化についての実験である。液体窒素実験は、準備も比較的簡単で、いつも小中学生には喜んでもらえる。しかし、地球温暖化実験は、特に対象が小学生の場合には、どうのように分かりやすく説明して、全員で実験を行い、興味を持ってもらえるか、出前授業当日も試行錯誤しながら行った。ペットボトルに二酸化炭素、水蒸気、乾燥空気などをそれぞれ入れ、太陽光の下でどの気体を入れたペットボトル中の温度が上昇しやすいかという実験を行っている。小学生が直感的に理解できる内容にしたつもりだったが、参加した小学生自身の持つ知識と実験の関連性が低かったため、多くの小学生にはあまり理解してもらえなかった。一方、親子参加型の出前授業にも行く機会があった。その時は、科学に興味を持っている小学生が多く集まっており、全く同じ実験内容だったがよく理解してくれた。この地球温暖化実験を通して、小学生のような幼い子供達に環境について考えてもらうことの難しさ、まずは科学に興味を持つことが大切であることを強く感じた。

 現在、小学校で行われている授業の中で、環境問題を取り上げている科目は何があるか。例えば、理科では、太陽電池、リサイクルなどについて学習している。このように、環境問題を取り上げた内容あるが、あくまで理科としての内容になっている。そこで、環境のみを取り上げた授業を作ることが必要だと思う。この授業は従来、行われているものと異なり、知識や教養を得る勉強ではなく、私達が暮らしていく上で学んだことを今後どう実践していくかを考えることを目的としている。では、実際にどのような勉強を行うのか。

 例えば、食糧問題を取り上げる場合を考える。日本の食料自給率は39%であり、残り61%は輸入に頼っている。しかし、その30%は食べられず廃棄されている。これを、どれだけの人が自覚しているだろうか。家や学校でよく言われる「残さず食べなさい」という言葉から、子供が何を感じ取るかが重要なポイントである。ここで、食品を大切にしなければならないと子供に気づかせるために、自分達で作物を栽培し食事を作らせてみることを私は提案する。ただ、これはすでに行っている学校もあり、私も小学校時代に米と芋を栽培した経験がある。しかし、これだけでは何が大変なのか、地球に対してどういう影響があるのかが分からない。私の場合、作物を栽培するのが大変だったという記憶しかない。そこで、この作物の栽培に一手間加えてみたい。栽培中、その日にどの位の水を与えたかを記録することである。これは、バーチャルウォーターという考えを、身を持って知ってもらうためである。本を読めば、何リットルの水が必要だったとは書いてあるが、漠然としか分からない。このように提案したのは、子供にとっては教室で椅子に座り教科書を読むより、体を動かすことで理解しやすく、親しみやすくなると思ったからである。

 子供達が環境問題にあまり興味を示さない理由として、自然と触れ合う時間の減少したことも原因として上げられると思う。自然は循環型社会を形成しており、ここから学ぶことは今後の生活に繋がる重要な鍵である。今、ネイチャーテクノロジーという自然の技術を私達の生活に利用する研究が行われている。ネイチャーテクノロジーは動植物が元々備えている技術を模倣することの1つで、例えばカタツムリの殻に付いた汚れが水だけで落ちることを利用した汚れないタイルが作られている。これを作った石田秀輝先生は、生物学者は工学的メカニズムのことをあまり知らず、エンジニアは自然のことをあまり知らないのが、ネイチャーテクノロジーが広まっていく上での問題だと言っている。私は、この問題を解決するために、小中学校の教育現場で自然と私達の生活を結びつけられる授業を積極的に行うべきだと思う。私は、小学校時代に近所で虫捕りや植物を見ることがよくあった。その頃、蝶を見てなぜ薄い羽で飛べるのか、オジギソウは触るとなぜ葉が閉じるのかと疑問に思っていた。だが、授業ではそのようなことに触れることはなかった。そのため自分で図書室へ行き、本を読み科学に関する知識を得ていたが、1人では限界を感じた。その経験から小中学校の授業で自然現象への疑問を持ち、解決できる機会を設け、子供達により多く自然現象に興味を持ってもらいたいと思う。このことが、知識の向上や環境問題への関心へ繋がるのではないだろうか。

 環境問題を解決し、低環境負荷社会生活を目指すことが、今を生きる私達の目標である。しかし、自然を守ることを常に意識しながら生活することは私達にとって負担になることが多くある。少し見方を変えて、自然は守るものではなく、生活の一部であると捉えてみると、精神的負担は楽になるはずである。日本人は昔からそのような生活を行ってきており、その素晴らしい歴史、文化、生活が残っている。それらを今一度見つめ直し、今の日本にも残っていることを子供達へ伝え、守り続けてもらわなければならない。そのために、環境問題に対して真摯に取り込むことの出来る教育環境を小中学校に整えることで、子供達がそれらを学ぶ機会ができるはずである。高度経済成長の日本を支えてきた私達の親、さらにその親の世代は、環境対策に関する様々な技術を考え出し、常に世界をリードしてきた。次の世代である私達は、豊かな心と知識を持つ子供達が1人でも多くなるように努力することで未来の環境を守ることに繋げていけると考えている。

【参考資料】

環境省HP「virtual waterhttp://www.env.go.jp/water/virtual_water/
TBS夢の扉「ネイチャー・テクノロジー 石田秀輝」2010年12月12日放送分
石田秀輝、新しい暮らしとテクノロジーを考える委員会 著
「地球が教える奇跡の技術」2010年3月16日発行 祥伝社  p10〜 p15