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2009年(第11回)

【優秀賞】
これからの技術者を育てるには創造教育が必要
徳山工業高等専門学校 機械電気工学科 4年
山根 健輔
山根 健輔

1.はじめに
 私は高専に入学して以来、日常生活において技術的な課題はないか、いつも考えている。これには理由がある。徳山高専の機械電気工学科では創造教育といって「課題を見つける力」と「課題を解決する力」を養う教育が行われている。このような教育が行われている理由は、日本が資源のない国であり、新しいアイデアを生み出すことで産業を支えていかなければならず、創造力を身に付けた技術者が必要不可欠ということだからである。そしてそのような創造教育の中心的な科目の一つとして創造演習というものが、1年生と3年生に設けられているのだが、この教科では、世の中で今何が課題になっているのかを見つけ出し、それを調査研究して、その解決の方向を見つけ出していかなければならないのだ。また本学科の創造教育には、新しいアイデアの実用化を進めるためには不可欠で、日本の産業を支える上でも必須となる特許についての教育が組み込まれていて、新しいアイデアが生まれれば、それを特許として出願し、そのアイデアを製品化することも狙いとした取り組みも行えるようになっている。
  そのような取り組みにおいて、私は自分が将来技術者になるのであるからと、日常生活の中から技術的な課題を見出すことをテーマとして取り組んできて、いつも技術的な課題を探す癖がついてしまったわけである。本文ではこれらの創造教育、特許教育での経験を述べると同時に、このような教育が、創造的な技術者を育てる上で、とても有効だという自分の体験に即した意見を述べようと考える。

2.創造演習での体験
 初めに創造演習で取り組んだ課題を通して得られたことについて述べる。まず、1年次には「これからの自動車の安全装置について」というテーマで調査考察活動を行った。このテーマを設定したのは、交通事故で年間6000人もの方々が命を落とす現実があり、この現状を改める方法はないのか考えてみたいとこのテーマにした。調査の結果、現在採用されている安全装置は事故が発生したときに乗員が負傷し難くする装置が主であり、事故そのものを防ぐものになっていないことが分かった。そしてこれからの安全装置としては、衝突防止、居眠り防止、速度超過防止など事故を積極的に防ぐための装置の開発が必要であるという方向を見出した。そしてそれらの安全装置の内容について提案すると同時に、このような装置を自分で開発したいなと思うようになった。
 次に、3年次には「これから求められる自転車とは」というテーマで調査検討活動を行った。このテーマにしたのは、現在多くの移動手段として用いられている自動車は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出する。今後地球環境保護の立場から言えば、排気ガスを出さない移動手段としての自転車をより快適にそしてより安全に乗れるものにすることが求められると、そのあり方を考えることにした。そして調査検討の結果、安全性を増すためには三輪型で、かつ天候に左右されないためにはベロ型の自転車がこれからの方向としては望ましく、動力の補助として電動アシストを用いるのがよいという結論となった。すなわち、現在の自転車がより自動車の形態に近づくことがその方向になるのではないかとの予測をした。
  これらの2つの活動を通して私が気づいたことは、現在実用化されている自動車や自転車という製品にも課題が必ず存在するということと、それらの課題を見つめているとその解決の方向というものが、パズルを解くように次第に分かってくると同時に、そのこと考えることが面白く充実感を感じるということだった。そしてまた解決策として考えられるものを、自分の手で作り出したいと考えるようになることも事実で、これこそが技術者というものの醍醐味かもしれないと思うようになった。

3.足用キーボードの特許出願とキャンパスベンチャーグランプリ応募の体験
 創造演習で以上のような体験をした後、ある日私は、あるテレビ番組を見ていた。そのテレビ番組には生まれつき両手が無い少年が出演していて、そこで少年は足で器用に鉛筆を持って、手紙を書いていたのだ。この光景を見て、なんと器用に足を使うのだろうという驚きと、この少年が使えるキーボードがあれば、コンピュータでも簡単に扱えて、文章の入力もできるのではないかと思ったのだった。ただ現在使われている手入力用のキーボードは、キーの数も多く、さらにキーの大きさも小さすぎる。すなわち、現状では手の不自由な人のための足で文字入力のできるキーボードがないという課題に気づいた。
 そこで手の不自由な人が、足で操作するキーボードはできないかという課題の解決策を考えてみて、キーの数が少ない携帯電話での文字入力方式が使えるのではないかと思い至った。12個の文字入力キーを使って入力を行うのは、足の器用な人であれば、十分可能かもしれないと思ったのだが、3年次に履修した特許の授業のときに、新規性がなければ、すなわちこれまで誰も考えたことのないものでなければ、このアイデアを実用化してもあまり意味のないことだということを習ったことを思い出し、特許電子図書館を使って特許文献の調査をした結果、十分新規性があるアイデアであることが分かった。この結果を踏まえて、アイデアを提案したところ、面白いアイデアであると評価していただき、特許出願を行うことになった。特許出願が決まってからは、関係書類の作成をしなければならないのだが、特に大変だったのは、特許内容を詳しく記述する明細書の作成であった。これまでこういった文章を書いたことが無かった私にとっては、とても大変な作業になったが、何とか特許出願を行うことが出来た。
 特許作業をしてみて感じたことは、もしかすると自分のアイデアが日本で初めてのものかもしれないという期待に、興奮とやる気がでてくるということがあった。単にアイデアを出す段階だけでなく、特許出願作業まで進むと、自分のアイデアを何とか実用化まで進めたいという気持ちが強まってきたが、その気持ちを形にする「キャンパスベンチャーグランプリ」というコンテストがあることを教えられると同時に、ビジネスプランの提案を勧められて、これに挑戦してみることにした。
  このビジネスプラン作りでは市場性があるかという点や、単価や製造費の設定などは初めての経験で、頭を悩ましたが、インターネットを使って身体障害者の人たちの数を調べたり、手で用いられるキーボードの値段を調べたりすることで何とかビジネスプランを作り上げて応募した。
 その結果書類審査を通過して、2次審査ではプレゼンテーションを行い、実際に企業を経営する多数の審査者からいろいろな質問や、改善点も指摘されたものの、幸いにも「環境・健康・福祉」部門の優秀賞を受賞することができ、自分のアイデアも、評価してもらえるレベルにあることを実感すると同時に、充実感と喜びを味わった。(図1、2、3参照)

4.おわりに
 私が経験した教育を通して言えると思うことは、これからの教育において本学科の創造教育で行われるような「課題を見つけ出す力」と「課題を解決する力」を養うことがとても大事であるということである。そしてそのような作業過程の中で、面白さややる気が自然に出てくるということも体験的に分かった。さらにそのアイデアを特許出願し、試作品造りをすることや、ビジネスプランに作り上げる中で、自分の手で、実際に困っている人たちに役立つい製品を供給してみたいという意欲がさらに湧き出てくるということである。
  このような体験をすることは、日本のこれからを支える技術者を育てる上で不可欠なものではないかと考える。テレビで見た手の不自由な少年に、私の作った足用キーボードを届けて、実際に使ってもらえるように、足用キーボードの試作・開発作業を続けていきたい。

図1 装置概略図
図2 装置使用状態斜視図
図3 装置立体図