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2008年(第10回)

【入賞】
医と工に求められているもの
沖縄工業高等専門学校 機械システム工学科 5年
玉城 誠也

<医療と工学>
 最近よく超高齢社会といった言葉を耳にする。医学の発展、食料の充実により人類は昔と比べて寿命がかなり延びている。そして、少子化といった問題を同時に発生している。その結果、高齢者の割合が増え、それを介護する若い世代の社会的負担が増加することになり社会問題となってきている。
 さらに、医療現場での問題として医者不足がある。地域医療の分野でそれはどんどん深刻化してきており、特に小児科・産婦人科の医者は働きすぎて過労死する医者が出てくるほど医者不足が深刻になってきている。
 私はこれらの問題に工学の分野で手助けできるのではないかと考えた。その方法が、医療機器の発展により医者への負担を軽くするといった方法である。手間のかかる検査が機械でスムーズに行えればそれだけで時間の節約になるし、よりよい機器を使用することによる医療ミスの未然防止、新たな病気発見法による医者への負担軽減など、機械が関わってくる分野はもちろんのこと、リハビリなどの分野でも工学的手助けはいくらでもできるのではないかと考えたのである。そこで最近の医と工の関係について調べてみた。
 今、医療と工学の連携はとても重要視されてきている。医療と聞くとほとんどの人が医者や看護師など直接患者に接している職種を思い浮かべるだろう。確かに、医療・福祉の分野の機器開発とメンテナンスは、少し前までは医療関係者でも十分対応できる範囲だったらしい。しかし、近年、テクノロジーの急激な進歩により医療関係者だけでは間に合わなくなってきていて、工学関係者との連携が求められてきているのだ。といっても、昔から医療関係者と工学関係者は連携していなかったわけではない。しかし、それはあくまで一方的な要求ばかりだったのである。医療関係者は工学関係者に実験、調査を依頼するだけで自分からはあまり情報を提供していなかったし、工学関係者も医療関係者と協力してなにかをつくるということをしていなかった。しかし、近年ではそれでは通用しなくなってきているのだ。それらの理由から医と工にはさらなる深い連携が求められてきているのだ。

<実例からみる医工連携>
 実際の医療と工学の連携について実例を挙げてみる。
・ 人工関節の研究における医工連携
・ 歯科医療における医工連携
・ 医療福祉機器開発における医工連携
 
 まず、人工関節の研究における医工連携の膝関節についての実例を示す。人工膝関節は、高度に障害された関節表面を、チタンやコバルトクロムなどの合金と超高分子ポリエチレンからなるインプラントで置き換えることによって、痛みを軽減し関節機能の回復を図る治療法である。人工膝関節の手術症例は近年、飛躍的に増加しており、国内での人工膝関節の件数は年間4万件を越えている。人工関節の最大の利点は、確実な除痛効果と関節機能の改善にある。最近では、そのデザインや材質,手術器械、手術術式の改良により術後の長期経過においても比較的安定した成績が報告されている。しかし、そういった改良が進んでいくうちに医者だけでは対応できない領域にまで入ってきているため、工学関係者との共同研究が必要不可欠となってきている。今はまだ、医と工がそれぞれのスタンスでお互いのニーズとシーズの理解不足のまま研究を行っているケースが少なくない。そのような場合、間違った研究の方向へ進んでしまい実効性の無い研究結果となってしまう。それを未然に防ぐためにもお互いを常に意識する必要がある。
 次に歯科医療についての医工連携について述べる。歯科医学と工学との連携は古くから試みられている。その一例が歯冠修復治療に必要な金属加工技術や有機材料の開発に見られる。さらに、最近ではコンピュータによるCAD・CAM 技術を応用した歯冠修復物の自動設計に工学的技法が使用されている。一方で、様々な測定機器や解析手法が開発されてきた。レーザドップラー血流計、顎運動解析装置、心電計、マルチテレメータシステムなど,臨床や研究にも取り入れられる機器は工学分野の先端技術によって作り出されている。最近では顎関節症の要因・現象を、三次元モデルを用いて機械的に考察することによってその治療法に役立てるといった研究が進められている。このように、歯科医療においても医工連携は重要視されてきている。
 次に、医療福祉機器開発における医工連携についての現状を述べる。医療福祉機器を開発するには、まず医療福祉の現場で何が必要とされていて何が実現可能であるかを双方の関係者が十分見極めなければならない。そのためには医工双方の関係者、それも研究者だけではなく医療福祉現場の職員や製造業者までが顔を合わせて意見を交換し合い、開発ニーズと実現性の双方を探る必要があるのだ。その一例として栃木県の「とちぎ生体・医用・福祉工学研究ネットワーク」という組織について述べる。この団体は宇都宮大学、自治医科大学、獨協医科大学、国際医科福祉大学の四大学と栃木県内の30社が加入して栃木県初の医療福祉産業創生を目指したネットワークが造られたのである。ネットワークは医療関係者と工学研究者、地元企業関係者が懇談する場を設けることから始まり、そこでは医科大学教授から市中病院医師、開業医、老健施設研究者などさまざまな職種の人たちが現場での生の声を要望として述べ、工学研究者と製造業者が実現する方法を提言する。これにより、今までとは違った道が開ける可能性が生まれるのだ。

<まとめ>
 これまで述べたように近年、医療と工学の連携は医療の様々な分野でだんだんと重要視されてきている。昔のように医療は医療関係者だけでどうにかなるレベルではなくなってきているのだ。逆に医療の発達により工学関係者も医療の発展を理解しなければ新しい機器を開発することも出来ない。医と工の連携が今では無くてはならないものとなってきている。そこで、今の医療・工学関係者の人たちは医と工の連携を重要視するべきだし、その性能を生かすためにも医療と工学の両分野の協力でこれからの若手への教育、熟練への再教育を重要視してほしい。日本は将来、超高齢社会となるだろう。そこで、重要視されるのは医療・福祉の分野だ。それらの発展のためにも今のうちから動くべきだろうし、それが日本の将来を支える力となるだろうと私は考えている。

【参考文献】
[1] 日本機械学会誌 第109巻 第1047号 平成18年2月5日発行
発行所 社団法人日本機械学会