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2008年(第10回)

【入賞】
ビオトープによる環境保全
沖縄工業高等専門学校 生物資源工学科 5年
高良 国慧

 環境問題は、先進国が科学技術の発展とともに様々な産業の中で多くの資源を利用し、その結果、その過程で発生した副産物により起きた現象である。 これにより世界は今、 危機的状況にさらされている.
 私が思うに世界は、大きな一枚の布で覆われているような状態だと考える。 現在の地球では、この布の様々な箇所に不自然な力が加わり、それによりその周囲がやぶれてしまっている状況だと思う。さらにこの亀裂による負荷は、一枚でつながっているため離れた場所にも影響を与えてしまう。そして亀裂はやがて地球を引き裂くことになるだろう。これが環境問題である。科学技術の発展は日本を含め世界の将来を大きく変えてしまった。

 この亀裂を繕うために、ビオトープという技術を考案する。ビオトープとは生物群集の生息空間を示す言葉である。本来ドイツで生まれた言葉であるが、日本では、川や池を人工的に作り、そこに生物を住まわせるという概念のもとおこなわれている。水の近くには、 様々な動植物がすみかを作っていくため、日を追うごとに様々な命がひとつの自然を形成していく様子が伺える。この人工的な自然を用いて破れた箇所の修繕をおこなうというのが今回の提案である。
 例えるならまずは、自動車や発電、その他もろもろの要因による過度な二酸化炭素の排出に対して、ビオトープをつくることで、その近辺に生育する植物の光合成によって抑制する効果などが考えられる。光合成が有効な理由としては、この機構が二酸化炭素を吸収し、酸素を排出する特徴を持っているからである。現在深刻な地球温暖化は。二酸化炭素が主な原因であり、これを減らすことは、今回の提案である亀裂の修復になると考える。
 ビオトープ以外にも環境問題に対して多くの効果的な手段が存在すると思うが, 環境問題の難しいところは、すべての環境に負荷を与える要因が絡みつきひとつの問題の原因がどこにあるか特定しにくいことである。さきほどの例でいえば植物が二酸化炭素を吸収したからといって地球温暖化以外の環境問題に効果があるかといえば微妙である。 ひとつの要因を解決してもそれだけでは、抜本的な解決にはつながらない。だが、私はビオトープにはそれらを解決に導く可能性があると考える。

 よく水不足問題の解決のためであろうダムが開発されている様子を目にすることがある。生物にとって水は、生きていくために必須なものであり、それを貯蔵する施設の建設は、 とても有益な事業だといえる。しかし、この開発に伴い多くの自然が破壊されている。中でも森林の伐採をおこないダムの建設を進めることは、元来住んでいた生物の住処をなくし、伐採により失われた植物がおこなっていた光合成の量も減らし、そこの自然の生態系を著しく損傷する。また、不自然に水を−箇所に集めることで負荷が加わり、大雨などで洪水が起きる危険性もはらんでくる。
 しかし、これらの事業をやめることは、私たちが今の生活を営むことが出来なくなるため不可能である。ならばよりもとの自然の形に近づけようというのがビオトープの技術である。実際、最近のダム建設ではこれがおこなわれ始めている。例えば、住処である木を失ったトリのために伐採した木を加工し別の地域に設置することで、新しい巣を作れるようにし、失った分の木を補うために植林をおこなう事業などがある。ビオトープ技術はこういったかたちですでに身近なものとなっている。
こういった取り組みは様々な分野の事業でおこなわれるべきである。壊してしまったものは、出来る限り本来の姿に近づけていくことで自然本来の機能をとり戻していくことが可能となる。
 しかし、企業などがそういった取り組みをおこなっているだけでは、地球上のいたるところにある無数の傷をカバーすることはできない。そのため、ビオトープの技術は、多くの人々が日常の中であたりまえのようにおこなえるものでなくてはならない。

 ビオトープ技術の利点として、自分の家の庭のほんの少しのスペースやアパートのちょっとした敷地にも設置が可能なことがあげられる。自分で池をつくるかもしくは、簡単なものなら大きめのプラスチックの容器に水をためておくだけでも良い。水草などは放置しているだけでもいつのまにか生え始め、そのうち、アメンボやヤゴ、オタマジャクシなど様々な生物が見られるようになり、その周囲にも動植物が現れ始める。
 このように、ビオトーブ技術は比較的簡単におこなえる。では、このビオトープ技術にはどのような意味があるのか. やはり直接環境に効果があるのは、さきほども述べた二酸化炭素の吸収である。多くの人々がビオトープを製作することでこの効果は、非常に高いものとなる。だが、ビオトープをつくるうえで最も価値のあることは、このつくられた自然が自らその他の自然の発生を誘導していくことである。しかし、これがおこなわれるためにはビオトープをつくるうえで注意しなければならないことがある。それは、ビオトープに住まわせる生物は、元来そこに住んでいた生物であるということである。最近では、よく外来の生物を放すことでもとあった生物が淘汰され生態系のバランスが壊れてしまうという話を聞く。ビオトープは、その制作方法によっては、そのような同じ効果を持つ可能性がある。
 では、これらを防ぎ、なおかつビオトープの機能を最大限に生かすためには、何をすればよいか。まずそのためには、設置する場所の自然環境を理解することが必要である。どのような生物がすんでいたのか、どのような草花が生えるのか、その土地独自の自然環境を再現していくことで、今回のテーマであるビオトープ技術による地球の亀裂の修繕は、 可能となる。

 環境問題は、現在解決しなければならない重要な課題であるが、多くの場でこのビオトープをつくる取り組みがおこなわれれば、地球環境は本来の姿を取り戻すのではないのだろうか。多くの文化は、当初自然とともに共存していくことで発展してきている。自然を一方的に搾取した文明のことごとくが衰退しているというのは、このルールを無視してしまったためである。現在の文明は、限りなくその状態に向かって収束し始めている。地球温暖化、水不足、砂漠化、酸性雨、その他多くの環境問題が起きているこの状況は、非常に危機的である。
 ビオトープ技術の試みが発展すれば、いずれ地球は、すべての機能が相互的に作用していた本来あるべき形になるであろう。そのためにも私たちは、今からでも小さな自然をつくることをやっていくべきである。これにより私は、近い将来の日本が、自然と人間がより親密な関係になれるような、緑あふれるような美しい発展をしていくことを期待せずにはいられない。