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2008年(第10回)

【入賞】
核兵器の平和的再利用と日本の果たすべき役割
大阪市立大学 工学部 応用物理学科 3年
九井 琢也

<1.悠久の夢>
 私には夢がある。それは核兵器の廃絶である。
 今を遡ること63年、日本は2度も原子爆弾を落とされ、未曾有の惨事を経験した。今、それが何万回となく繰り返せる程の核爆弾が世界中に存在している。人類の未来をより明るくし,恒久の世界平和を手に入れるためにも、核兵器を廃絶することが急務である。
 そこでその方法として、一つの提案をする。それは、核兵器を解体して原子力発電の核燃料として再利用する、というものである。
 現在世界にある核爆弾は原子爆弾と水素爆弾に大別される。原子爆弾はウラン又はプルトニウムを主構成要素とし、水素爆弾はこれに加えて三重水素とリチウムも入っている(図参照)。また核爆弾は主に弾道ミサイルに搭載されている。本論文では、これら核兵器の主構成要素全てを平和的に再利用する方法について考える。

<2.核爆弾を核燃料へ>
 初めに,核爆弾を核燃料として再利用することを考える。ここで、世界中の核爆弾を核燃料に転換して発電した時のエネルギー総量と、日本及び世界全体の年間電力消費量を比較する方法を採る。
 さて、世界に存在する核爆弾の数は25,886発(2007年)とされ、冷戦中よりも減少している※1。減少分は“無力化”されたと発表されているが、現在の科学技術では核爆弾そのものを無力化することは不可能で、せいぜい信管や爆弾周囲の通常爆薬(起爆剤)を取り外し、地下深くの格納庫に埋蔵する程度である。これより各国は、未だに核弾頭の本体をそのまま保有していると考えることもできる。ここではこの考え方を用い、世界中に存在する核爆弾の数は各国の最多保有数の和、即ち78,530発であると考える(表1参照)※2。
 これについて、まずウランを燃料化することを考える。ウランを含む核爆弾は米、英、露、仏、中の五ヶ国が持つ水爆である。水爆にはウラン235が90%以上の濃縮度で含まれている。ここに安定なウラン238を混ぜて濃縮度を低くした後、セラミック材料で焼き固めてペレットとして用いる※3。
 以下、具体的に計算する。ウラン235の臨界量は23kgである※4。また上記五ヶ国が保有する水爆の総数は78,330発である※5。濃縮度は3〜4%に下げることとされており、ここでは間を取って3.5%とする※6。尚、元の濃縮度は90%とする。すると五ヶ国の水爆に使われているウラン235の総量は、
23×78330×( 90÷100 ) = 1.621431×106 ≒ 1.62×106〔kg〕
となる。
 ここでペレットの質量を算出する。原子力発電所で使われる核燃料はペレットを詰めた燃料棒の形で使われる。燃料棒1本につきペレット350個、燃料棒は64本を1体として764体となっている(沸騰水型)。その場合、ペレットの総重量は140トンである※7 8。
これよりペレット1個の質量は、
140×106 ÷ {( 64×764 )×350} = 8.1806… ≒ 8.18〔g〕
となる。ペレットの濃縮度は3.5%だから、ペレット1個に含まれるウラン235の質量は、
8.18×( 3.5÷100 ) = 0.2863 ≒ 0.286〔g〕
となる。これより五ヶ国の水爆からできるペレットの個数は、
( 1.621×106 )×103 ÷ 0.2863 = 5.6618…×109 ≒ 5.66×109〔個〕
ペレット1個で平均的な家庭1世帯の消費電力の半年分を作ることが出来る※9。平均的な家庭1世帯の年間電力消費量は45.3GJである※10。これをペレット5.66×109個に当てはめると、
( 5.662×109 )×( 45.3×103 ) = 2.5648…×1014 ≒ 2.56×1014〔MJ〕
ここで各物理量の定義より、次の換算式を用いる。
1kWh = 3.6MJ
するとペレット1.86×109個から生み出される電力量は,
2.565×1014 ÷ 3.6 = 7.1246…×1013 ≒ 7.12×1013〔kWh〕
となる。日本の年間電力消費量は8,937億7,529万kWh(2005年)、世界の年間電力消費量は16兆3,351億kWh(2006年)である※11 12。それぞれについて上で求めた電力と比較すると、表2のようになる。表2の世界の年間電力消費量に関して,BRICs等新興国の台頭で電力消費が年々増えていることを加味しても、約4年分に相当する。よって、核爆弾を核燃料にすると、世界のエネルギー事情にとって、ある程度良い結果が期待できると考えられる。
 そこで次に、プルトニウムの燃料化について考える。プルトニウムは臨界量が6kgとウランと比べて少なく、核爆弾が比較的軽くなるため、新保有国が保有していると考えられる※13。プルトニウムはそれ自体が核爆弾の原料であると共に、水爆の起爆装置内にも含まれている。故に核爆弾用プルトニウムの保有国は前述の五ヶ国にイスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮を加えた九ヶ国となり、保有総数は78,530発である※14。
 プルトニウムは核爆弾には濃縮率93%以上で含まれている※15。故に上記九ヶ国の核爆弾に使われているプルトニウムの総量は、濃縮度93%とすると、
6×78530×( 93÷100 ) = 4.3819…×105 ≒ 4.38×105〔kg〕
となる。プルトニウムはウランと異なり、そのままでは核燃料になれない。反応性がウラン以上に強いからである。そこで現在推進されている「プルサーマル計画」では、プルトニウムと二酸化ウランを少量ずつ混合した核燃料(MOX燃料)を用いる方針が採られている。そうすればプルトニウムも有効に再利用され、前述のウランと相まって、より大きな電力を生み出すことができるようになると考えられる。 最後に、水爆の原料として使われている三重水素と重水素化リチウムの再利用に関する所見を述べておく。これは今世界各国が共同で開発中の新型原子力発電の燃料として使える。新型原子力発電計画(ITER計画)では従来の核分裂エネルギーに代わって核融合エネルギーを利用する。その場合,放射性廃棄物の量が格段に減少するので、放射性廃棄物の問題が大幅に緩和されると期待されている。次世代エネルギーの開発に、今、世界を脅えさせている水爆の原料を利用することは、核廃絶とエネルギー問題の同時解決につながり,まさに一石二鳥の名案であると考えている。

<3.弾道ミサイルを宇宙開発へ>
  核爆弾は主に弾道ミサイルに搭載されている。ここではその再利用方法を考える。
 私は核爆弾を取り外した後の弾道ミサイルは、宇宙開発に利用すればよいと考える。弾道ミサイルは大気圏外の宇宙空間まで重い核弾頭を輸送することを念頭に作られていので、かなり丈夫である。これは人工衛星等を宇宙空間まで運ぶにはもってこいである。
 既にロシアではその取組が数年前から始まっている。核弾頭を外した“元”大陸間弾道ミサイルの弾頭に人工衛星を積んで打ち上げ、宇宙開発に活用している。軍からの払い下げ品なので打ち上げ費用も安く済み、日本の民間企業も参入しているようだ※16。
 このような取り組みは他の核保有国も見習って、強く推進するべきである。

<4.将来への展望と日本の役割>
 本論文での私の提案は、原子力発電の健全な発展なくしては成しえない。
 まず原子力発電の良い面ばかりでなく、危険なところを正確に、加えてそれへの対策を明確に示して誤解を除くことが重要である。そして企業や行政が法令順守を徹底することも強く求められる。更には科学研究・開発への十分な予算を交付し、国・世界レベルでの後押しをすることも必要となる。
 前述の通り、日本は世界で唯一、核兵器の惨禍を身をもって体験している。その惨禍を繰り返さないためにも、この研究・開発の最先端に立ち、世界を牽引していくのが良いと考える。そして核廃絶、恒久の世界平和という見果てぬ夢の実現に繋げていくべきである。

【参考文献】
[1] 核情報 2007年の世界の核状況
http://kakujoho.net/ndata/nstat.html
[2] 表1(1 核情報 2007年の世界の核状況 より作成)参照
[3] 新金属の知識 Topics3 ウラン(鉱石から燃料まで)
http://www.jsnm.or.jp/chishiki3.html
[4] 放射能Q&A Q5 原爆と原子炉はどう違うのですか。
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/renew/information/interna_heal_j/a5.html
[5] 表1参照
[6] [4]に同じ
[7] 青森県エネルギー総合対策局 原子力豆知識 3.原子燃料サイクル 3-3燃料の製造
http://www.shigen-energy.jp/atom/note/059060.htm
[8] Atomic Energy Data Station(LAST UPDATE 2002.8.5)
第1部 原子力について 発電所の種類 沸騰水型軽水炉
http://contest.thinkquest.jp/tqj1999/20159/bwr.html#bwrfuels
[9] 関西電力 電気ミニ通信75号*…*いちぼると*…*
http://www.kepco.co.jp/nara/ichi-volt/stock/i/75/mini/index.htm
[10] 財団法人 省エネルギーセンター よくある質問とその答え 1.家庭全般
Q1.家庭で一年間に使うエネルギーはどれくらいですか。また何に使われていますか。
http://www.eccj.or.jp/qanda/household/qa01.html#01
[11] 経済産業省 資源エネルギー庁 エネルギー白書2007年度版
第2部エネルギー動向 第1章第4節 1.電力(1)需要の動向
[12] 三洋半導体 地球といのちのために、半導体ができること
[13] [4]に同じ。
[14] [5]に同じ。
[15] Atomic Energy Data Station(LAST UPDATE 2002.8.5)
第1部 原子力の仕組み 核燃料サイクル 2.プルサーマルの仕組み
プルトニウムの利用方法
http://contest.thinkquest.jp/tqj1999/20159/cycle.html
[16] NHKスペシャル「揺れる・ロシア戦略ミサイル軍」
2003年1月25日(土)午後10時00分〜10時50分 放送

国名 核弾頭数 最多年
アメリカ 32040 1966
ロシア 45000 1986
イギリス 350 1975-81
フランス 505 1990
 中国 435 1989,91-93
イスラエル 80  
インド 60  
パキスタン 50  
北朝鮮 10  
合計 78530  
表1 各国の最多核弾頭保有数及びその保有年

  核弾頭からの
変換エネルギー
年間電力消費量
  日本(2005) 世界(2006)
電力(kWh) 7.12×1013 8.94×1011 1.63×1013
比較(倍) 1.00 79.72 4.36
年単位   79年+9ヶ月 4年+3ヶ月
表2 核爆弾からの変換エネルギーと日本・世界の年間電力消費量との比較

図 水爆弾頭の構造
出典:First-report of the International Panel on Fissile Materials p.8
米印原子力協力と日本 http://kakujoho.net/inpk/ui_fmct.html#id4