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2006年(第8回)

【優秀賞】
「技術者には楽しい夢が必要」
徳山工業高等専門学校 機械電気工学科 3年
細田 将吾

技術者には楽しい夢が必要だと思う。なぜそのようなことを考えるのかというと、現在、科学や技術には、地球環境問題や資源の枯渇など難しい問題がたくさんある。そのようなことを考えると、何となく暗い気持ちになってしまうのは私だけではないだろう。しかしこの地球環境問題や資源の枯渇問題を楽しく解決していくことができるなら、技術者の意欲も増し、一人でも多くの人に実践してもらえるような、そんな身近なモノを開発することができるのではないかと思う。技術者が楽しい夢をもつことで、科学や技術のかかえる問題を解決するきっかけになると考える。

そこで今回私は、以前から興味を持って、調査をしてきた、生ゴミ問題を取り上げてみたいと思う。「生ゴミ」と「楽しい夢」・・・・明らかにミスマッチな言葉である。「生ゴミ」といえば、「臭い・汚い」。多くの人がそう答え、また私自身もそう思っていた。しかし、もしそんな生ゴミで発電ができたら、そしてその発電を利用して自家用車を走らせることができたら・・・・。そんな夢のような話があれば、「臭い・汚い」だけの「嫌われ者」の生ゴミから、今問題になっているゴミ問題、さらには環境問題を解決する「救世主」になるのではないだろうか。
 
ここで、なぜゴミではなく、生ゴミなのか….それは生ゴミが一般廃棄物の約50%を占めていて、家庭からでる生ゴミの排出量を減らすだけで、相当のゴミ問題解決につながると考えたからである。そこで、生ゴミの有効利用法について調べていった。ちなみに、私の家の生ゴミ有効利用法は堆肥化である。ゴミ箱は畑である。捨てるだけで、生ゴミはいい肥料に変わってくれる。しかし、私の家のように田舎で、畑を持っている家庭は少なく、異臭のする、家庭では嫌われ者の生ゴミは、すぐにゴミ箱に捨てられる。調査の結果、生ゴミは捨てるのにはもったいないくらいの、知られざるパワーを持っていることがわかった。そのパワーを利用したものが、生ゴミ発電である。

 そこでふと思いついたのが、生ゴミ発電で発電された電気で自動車を走らせることはできないだろうかということである。そしてこのまるで生ゴミを食べながら走っているかのような自動車を、家庭レベルで実現したらどうなるか。「1日に溜まった生ゴミを自動車の横に取り付けたタンクに放り込んでおけば、寝ている間に、タンク内で発酵されて、走行可能になる」だとか、「お隣さんにゴミをくださいと言って走って回る」ことや、「町内を走ってゴミを集めれば、それだけでゴミ収集車がいらなくなってしまうかもしれない」といったことにまで、夢がふくらんでくる。

 以上のことは、私の想像であって、ちょっと奇想天外であり、冗談と思われるかもしれない。しかし、この「生ゴミを食べながら走る自動車」が非現実的ではないということがわかった。
そのことを証明するために、生ゴミ発電について具体的に説明する。生ゴミ発電は、一般家庭からでる生ゴミからメタンを発酵させてバイオガスを発生させ、そのバイオガスの中から水素をとりだして燃料電池で発電させるという仕組みになっている。
そして、その仕組みを、2001年、神戸市で利用したのが、「生ゴミバイオガス化燃料施設」である。これは、世界初の試みで、実際に運転を開始している。その発電力は、6tの生ゴミから約2,400kWh。これは,240世帯分の1日の消費電力量に相当する(1)
しかし、この生ゴミ発電は、神戸市内のホテルから大量にゴミを回収し、大きな発電所にゴミを運び込んで、大きなボイラーや発電機で電気を起こすやり方である。そのため、私が考えていた、自分の家で出た生ゴミを自分の車で発電させ、車を走らせる、個人レベルの話には結びつきにくい。

 そこでもう少し個人レベルでゴミを使ったエネルギーで自動車を走らせる試みはないか調べてみると、スウェーデンのバイオガスを利用した列車が挙がった。スウェーデンといえば、環境大国で有名である。以前テレビで、このバイオガスに関して、自宅からでた排泄物からバイオガスを発生させ、そのバイオガスを利用してバスを走らせているというのを聞いたことがある。この列車も似たようなもので、バイオガスを破砕された植物質と動物性廃棄物をタンク内で混合しメタン発酵で取り出すものである。1回の満タンで航続距離は600km、最大時速は130km/hにもなるといわれている。この列車以外にも、すでにスウェーデンでは、この列車と同じ仕組みを利用したバイオガスで走るバスが779台、ガソリンとバイオガス(もしくは天然ガス)の混合燃料を使った自動車は4500台以上もあるらしいのだ(2)
このような例になってくると、私のイメージした「生ゴミを食べながら走る自動車」に大きく近づいてきたのではないかと感じられる。

さらに調べを進めると、自分の家庭で使ったてんぷら油を使ってディーゼル自動車を走らせるというのがあり、これはかなり近いものではある。しかしてんぷら油だけというのは、ゴミを食べるというイメージにはそぐわない(3)

 やはり、「生ゴミを食べながら走る自動車」の実現は難しいのだろうか。具体的な数値を挙げて考えてみる。現在、国内で、1年間に約70億kwhもの発電が、一般廃棄物を燃料としてなされている。1日約1900万kwh発電されているという計算になる。一方電気自動車は、1台40kwの出力で走行可能になる。1日1台1時間走行したと考えると、1日に48万台もの自動車が走行可能となる(4)
しかしこの発電は、一般廃棄物によるものである。前述したように一般廃棄物の半分は生ゴミであるので、少し強引だが、現在の国内の生ゴミ発電量で、1日に24万台の自動車が走行可能であるという計算になる。発電方法は違うが、一般廃棄物の発電で、現在これほどまでの自動車が走行可能なら、近い将来、私の考えた「生ゴミを食べながら走る自動車」が車道を走る時代がくるのではないかと、期待がもてる。
 
しかし、私の考えた家庭で出た生ゴミを家庭で発電して、車を動かすには、さまざまな問題点があるのは事実だ。しかし、これが実現すれば、生ゴミはゴミ箱へ捨てるのではなく、自動車に捨てるのだから、生ゴミの排出量は間違いなく減っていく。そして、その生ゴミを利用した自動車は、ガソリンを使わず燃料電池で走らせるのだから、環境に悪影響を及ぼしている排気ガスは発生しなくなる。「生ゴミを食べながら走る自動車」は環境問題とゴミ問題の両方を解決できる、一石二鳥の環境にやさしい車なのである。

この自動車のエネルギーとなる生ゴミは、元々は自然からできたもの。自然には、まだ人間の知らないような力がたくさん隠れている。生ゴミだって同じだ。調査を進めてきた結果、生ゴミから発生するバイオガスの知られざるパワーに驚いた。普段家庭で必然的に出てくる生ゴミで、車を動かすことができるなんて、想像がつくだろうか。

この「生ゴミを食べながら走る自動車」のような、夢のような話は、問題点が多く実現まではかなり時間がかかるかもしれない。しかし、その問題点を解決していくのが技術者であり、自分の夢見ることが実現するとなると、楽しくなる。そしてその楽しい夢を実現するために技術者が知恵を絞る。そんな楽しいサイクルができあがれば、理工系の人気がないなどという雰囲気は解消され、多くの楽しい夢を持った技術者たちが、今回取り上げた地球環境問題だけではなく、さまざまな問題を解決していくに違いない。

最後に私の楽しい夢をもう1つ。今回取り上げた「生ゴミを食べながら走る自動車」のような、身近なものを利用した、家庭でできる簡単な新エネルギーが世界中で使われるような時代がきたらいいなと考えている。

【参考文献】
1) http://www.kajima.co.jp/news/press/200108/3c1to-j.htm
   http://www.kajima.co.jp/news/digest/aug_2001/tokushu/toku01.htm
2) http://slashdot.jp/articles/05/06/21/2043255.shtml?topic=70
3) http://www.nef.or.jp/award/kako/h10/99syo06.htm
4) http://www.enecho.meti.go.jp/energy/newenergy/newene06.htm