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2005年(第7回)

【優秀賞】
「寸胴な“I”型から スマートな“T”型へ変貌するために。 」
名古屋工業大学 工学部 システムマネジメント工学科 4年
小松原 康弘

 2000年秋の大学審議会・答申は、教養教育の復活をうたい、ICUで取り入れられている「幅広く学びながら核となる専門を究める」ことを目指すリベラルアーツをそのモデルに挙げている。 専門性をタテ棒、視野の広さをヨコ棒で表すと、専門だけの人間は「I型」、これから幅広い視野と深い専門性を併せ持つ「T型」人間としている。 1)結果、全国の大学では文理融合教育を謳う学部・学科が急増しているのは周知の事実である。

 私自身も、現在その文理融合型教育を実際に受けている身であり、上記の事実を肌身で感じている。同時に現在の文理融合型教育が本当に社会のニーズに沿って成功しているのかということに疑問視している。 もちろん、教育の有効性は数年で効果が分かるものでなく、長期的に見なければ成功か不成功か判断できないのも事実である。ただ学生の大部分がスマートな「T型」でなく、 寸胴な「I型」つまり「文理融合」とは名ばかりで中途半端と化しているのが実感である。「総合」「文理融合」という言葉は一見聞こえの良い言葉であるが、 この分野こそ広範囲をカバーしている学問領域として実は一番勉強しなければならない分野であるにも関わらず、現在では中途半端な気がしてならない。 今回は、この文理融合型教育を受けている学生の1人として、この原因を探り、今後に向けてどうすればより社会のニーズにあった良い人材が養成できるかということを1度考えてみたい。

 一見、文系理系の学問を自分の興味に沿って学べる夢のような文理融合型教育が、中途半端になってしまった原因について、大きく3点あると考えている。 1点目は、学生自身が「文理融合型」人間いわゆるT型人間の必要性を心から感じていないということ、2点目は、本当にT型人間として「やらなければならないこと」が教育されていないということ、 そして最後に3点目は入学動機についてT型人間になりたいというより大学に入れたから入ったという消極的な形で入学した学生が多いことである。

 1点目の原因は、学生自身の経験不足にある。やはり18年〜22年という年月しか過ごしていない学生が心からT型人間の必要性を感じることは、 講義・アルバイト・サークルなど一般学生が送る通常の生活で感じるのは難しい気がする。最近では多くの大学で長期休暇を利用した就業体験として1〜2週間のインターンシップを採用している。 ここ数年でも急激に増加しており、製造業だけに留まらず多くの企業・官公庁が受入れを行なっている。ただ大部分のインターンシップは、 研修のように企業から企業説明を受けるといったものや何を学生にやらせたらいいのか分からないことで放置されるケースが多いとも聞き、まだまだ一部の学生だけが利用しているのも事実である。

 次に2点目の原因を考えると、文理融合型の講義が基本的に独立しているものではなく、多くが大学においてすでに開講している理系科目・文系科目に関して、 自由に自分で選択することができる点にある。現在文理融合型教育では、大学側が時間の制約によりただでさえ多い講義の中から取捨選択を行い、 学生に少しでも多くのことを学ばせ幅広い視野を持つ人材育成のために環境を整備している。私はこの流れの中で「自由」の名のもとに選択できる権限を強くしたために、 本来各分野で常識・基本とされる「やらなければならないこと」をクリアせず、簡単なところ都合のいいところだけをかいつまんで勉強しているように思える。

 3点目は、大学入試の軽量化の問題である。文理融合を謳う学部・学科は基本的に文系学生・理系学生を受け入れているので、間を取る形で受験科目が文系科目・理系科目にわたり、 少なく浅く広い受験科目設定になっている。結果的に理系科目が得意な学生は敬遠し、文系が得意な学生が多く入学するなど偏りも起きている。 また、今回文理融合型教育を受けている学生に対してアンケートを取ると、「入りたかった」というより、むしろ「入れた」と述べる人も少なからず存在した。 文系科目・理系科目ともによくもなく、悪くもなくという学生が集まりつつあることを示している。 したがって文理融合型人間・T型人間を育成しようとする目標理解もされないまま進学している人が多くいることはあまりいい影響を与えているとは思えない。
それでは果たしてどうすれば理想のT型人間を養成できるカリキュラムを組むことができるのだろうか。私は先ほどの原因に関連付け3点ほど提言したい。

 まず1点目は、長期インターンの義務化である。長岡技術科学大学では、文部科学省が認定する特色ある大学教育支援プログラムとして学部4学年後半の約5か月間、 必修科目として履修する制度を取り入れている。これは「技術に対する社会の要請を知り、学問の意義を認識するとともに、 自己の創造性発揮の場を模索すること」と「実践的・技術感覚を養うこと」を目的としている。 2)また特色あるインターンシップでは経済産業省が後援しているNPO法人ETIC(エティック)の「チャレンジコミュニティ創成プロジェクト」というものもある。 これは、日本各地における地域づくりの現場に若者が積極的に活躍する機会を創出する事業で地域の中小企業に3〜4か月の長期期間学生はインターン生として派遣され、 実際に一つのプロジェクトを進めるものなどである。3)人手不足に悩む地元中小企業や少しでも優秀な学生をリクルーティングしたい企業などでは積極的に受入れを表明している。 中小企業をはじめ、大学側が文理融合型の人間を求めている業界・企業に対して現在学生にアルバイトを斡旋しているように積極的に学生に斡旋し、 単位認定という形で長期的にインターンシップ生として派遣できる制度が採用されれば、 教育としての価値が高いのと同時に引いては社会ニーズを大いに汲み取った人材を創出するプラットフォームとして大学を位置づけることができ、地元産業への活性化へ地元の教育機関としても寄与できる。

 次に2点目は、1〜3年生において必要な科目とそうでない科目の優先順位をつけて、必要な科目に関してはしっかり時間をかけて、 T型人間が必要とされる基礎科目を行なうことである。極端な例ではあるが、理系白書シンポジウムの中でインクス代表取締役社長山田眞次郎氏が「毎日1科目を3か月間集中して教えたらすごく優秀になる。 年間4科目、4年で16科目やってくれれば、即戦力として使える」4)と述べている。例えば、学問的に本質を問う授業やグループ発表などアウトップばかりを評価するだけでなく、 プロジェクトを運営する上で必要なテクニックであるファシリテーション力、マネジメント力、市場を調査・分析を行う上での統計力、 人と人とを結び付ける交渉力など、文理融合型人材を育成する上で本当に「やらなければならないこと」を最優先に時間を多くかける必要があるのではないかということである。

 最後に3点目は、現在行なわれている大学入試制度の改定である。具体的には受験科目の増加で、浅く広くではなく、深く広い科目設定することで、 文系科目及び理系科目がともに得意な優秀な学生を1人でも多く文理融合を謳う学部・学科に受け入れようとするものである。実際受験科目が減ったのも、 受験する学生を1人でも多くしようとする試みだが、理想のT型人間を育成することを考えるなら、思い切って設定してみるのも一つの策ではないかと考えてしまう。 そのためにも今後文理融合型教育を受け卒業した一人一人が各業界にて活躍をおさめることにより、より一層注目を浴びる必要があるのは言うまでもない。

【参考文献】
1) 理系白書、毎日新聞科学環境部、2003年6月20日、p.300
2) http://www.nagaokaut.ac.jp/j/kenkyu/col/index.html
3) http://www.challenge-community.jp/about_mission.html
4) http://202.232.127.9/science/rikei/archive/news/2005/20050413org00m040001000c.html