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2004年(第6回)

【最優秀賞 文部科学大臣賞】
「独創技術を育てる2つの“時間”」
徳山工業高等専門学校 機械電気工学科 2年
高瀬 善康

 私は技術を生み出すとき、何かを創造するときには、2つの特別な“時間”―すなわち“自己の個性を生みだす時間”と“知識や技術を共有させる時間”がとても重要であり、この2つの“時間”を教育の場に反映させることで、本当の実践力・思考力を持った「独自の技術を創造できる技術者」を育てることができるのではないかと考えている。

【学内ロボコンでは個性を追求】
 私は徳山工業高等専門学校に所属し、メカトロニクス部の一員として活動を行っている。入部1年目の昨年に比べ、2年目となる今年は文化祭と同時に行われる学内ロボコンやアイデア対決ロボットコンテスト(以下高専ロボコン)にも積極的に参加することができた。

1つ目の“時間”を感じ取ることができたのは、徳山高専で毎年行われる学内ロボコンである。今年の競技内容はポールを上ってボールを取り込み、降りてきてから下にあるスポットにボールを投入して得点するというものだった。

 ポールを登るという難しい競技だが、昇降の機構には複数個のタイヤでポールを挟み、移動するものが一般的である。しかし、私は勝負を捨ててでも自分の独自性を追及したロボットを作りたかった。それは他の人とは一味違う、「見ていておもしろいロボット」を作ることに興味があったからだ。

 私は授業でロボットを1つ作っていた。ポールにぶら下がり、ナマケモノのような動きで水平方向に移動することができるのだが、それをこの競技に流用することにした(図1)。だが、水平方向に移動するロボットを上下方向の移動にも対応させるのは簡単なことではない。足同士の干渉や摩擦の問題など、壁は多かった。効果的な方法も分からないので、補助の部品を作ってみたり、ナットの締め具合を調整したり、試行錯誤を重ねた。

 そうして大会当日、私のロボットは、ぎこちない動きながらもなんとかポールの最上部まで登ることができた。ロボットを見ていた小学生にもとても喜んでもらえ、その反応が「見ていておもしろいロボット」を目指した私にとってはとても嬉しかった。得点することこそ叶わなかったが、私としてはとても満足のいくロボットを作ることができた。

 学内ロボコンでは自分のこだわりを貫いたロボットを作った。一人で思案し作り上げていくなかに自分のオリジナリティを十分に籠めることができた。

 自分のやりたことは何なのか、そう自分に問う時間、自分のやりたいことやオリジナリティをしっかりと見つめ直す時間が技術開発には大事なのだと私は考えている。 一人で思案し自分の個性としっかりと向き合う時間、この時間こそが私が重要だとする2つの“時間”のうちの一つである。

【高専ロボコンでは技術の共有】
 2つ目の“時間”はそうやって独自の技術を育てた者が、それぞれの経験を足し合わせ、新しいものを創造していく過程で見出すことができた。 高専ロボコンでは学内ロボコンとは対極的に、部員全員でアイデアを出し、作り上げていく。皆得意とすることは様々で、加工を得意とする人や、回路や制御に秀でた人、他人とは一味違う想像力を発揮してくれる人など、自分の得意なことを持ち寄ってロボット作りに参加する(図2、3)。

 今年の高専ロボコンでは、親機ロボット(図5)に載せた自動制御ロボット(図4)を発進させる際に、その命令をどうやって伝えるかという課題があった。私はその課題に対して、自動制御ロボットについたスイッチを、親機が物理的に押すことで発進させようと考えた。だが、様々な状況を想定した場合、スイッチのように的が小さいと確実に動作させるのは難しい。自動制御ロボットが親機にずれて載っていても上手く発進できるようにしなければならない。どうすれば良いか?残念だが、私はスイッチを押すという手段以外考えることができなかった。

 そこに、他のメンバーのアイデアが導入された。それは自動制御ロボットと親機に2つずつ銅板を取り付け、接触させることで発進させるという方法である(図6,7)。通電させるための銅板はスイッチと違い、面積を広くすることができるので自動制御ロボットが親機のどこに載っていても通電させることができる。

 それまでスイッチを押すという物理的な方法しか知らなかった私にとって、それはとても新鮮なものに感じられた。あまり難しい事ではないのかも知れないが、私にとってはこれまでとはまた違う技術を吸収し、学ぶこととなった。

 そして、私はこのような“時間”を大事にしたいと思う。このように他の人のもつ知識や技術に触れながら活動を行うことで、私は自身の知識や技術の幅を広げることができ、同時に多分野の考えを導入することや、共同開発を行うことの重要性を知ることができた。

 得意とする分野こそ違うが、知識を出し合い技術を共有させ、1つの目的に集約させる。このように共同開発を行い、知識や技術を共有させている時間こそが自己の能力を飛躍させる重要な時間なのだと私は思う。

 そしてこれが私の考える、何かを創造するときや技術を生み出す際に重要な2つ目の“時間”である。

【2つの時間で技術を創造】
 2つのロボコンから“自己の個性を生みだす時間”と“知識や技術を共有させる時間”の重要性を感じ取ることができた。新たな技術を生み出すためには、一人で考え創造し、普段消えてしまいがちなオリジナリティや自分らしさを生み出す時間と、多くの人が知識や技術を共有させて自分の幅を広げる時間の両方が必要だといえる。その2つが相まって初めて“独自の技術”を創造できるのではないだろうか。

【2つの時間を教育の場へ】
 実践の場から学ぶことができた2つの“時間”。しかしこの考えは、教育の場にこそ最も生かされるのではないかと私は考えている。 現在の教育では知識を与えて“知識や技術を共有させる時間”は十分にあるが、その後自分で考え、自分の意思や個性を吹き込む機会に欠けているのではないだろうか。本当の実践力や思考力を身に付けようとするならば、“自己の個性を生みだす時間”と“知識や技術を共有させる時間”のどちらが欠けてもいけない。2つの時間を数多く体験すること、それが自分の可能性を広げ、「独自の技術を創造できる技術者」になる手助けとなるはずである。

 本当の思考力・実践力は、自分のやりたいことやオリジナルとは何なのかを考え創造するところに生まれる。新しい製図法を知ることができたのなら、それを使って最も早く正確に図面を描くことができる自分のスタイルを考え、書いてみる。新しい加工法を身に付けたのなら、その方法をどう使えば最も有効か、どんな新しいものが作れるかを自分で考え実践する。どんなに細かな知識でもそうやって、それを使って何ができるかを考えていけば、いつか独自の技術を創造するところまでたどり着く。そのような時間をどれだけ多く経験させることができるかが、これからの日本の教育の課題ではないだろうか。

 どれほど優秀な人でも一人で多くの技術を生み出すのは不可能だ。しかし数多くの人が“自己の個性を生みだす時間”と“知識や技術を共有させる時間”を持つことができれば、思考の数だけそこに技術の若芽が生まれる。一人一人が「独自の技術を創造できる技術者」になる素質を得ることができる。そこに私がこの2つの“時間”を提案する最大の意義がある。

 日本にとって独自の技術の創造ということが強く求められている現在、2つの時間を大切にした教育が、独自の技術を生み出す技術者を育てる上では重要である。私はこの考えがこれからの日本の教育に反映されることで、個人のオリジナリティを十分に引き出し、本当の実践力と思考力をもった「独自の技術を創造できる技術者」を育成できる教育になることを願っている。そして自分でも本物の実践力、思考力を身につけるために、2つの“時間”を大切にしながら日々の技術の向上に努めていきたい。

【図1】学内ロボコンで作ったロボット
【図2】高専ロボコンの製作の様子

【図3】高専ロボコンの競技中

【図4】自動制御ロボット
【図5】親機ロボット
銅板AとB、CとDが接触している状態(搭載している時)でB-D間を通電させるとA-C間も通電し、発進の命令となる。

【図6】親機に自動制御ロボットが乗っている状態
【図7】図6を別角度から示したもの