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2003年(第5回)

【優秀賞】
「遺伝子組み換えで温暖化ストップ」
東京電機大学 理工学部知能機械工学科 3年
佐藤 貴規

 はじめに、遺伝子組み換え技術とは何か整理しておくと、それは、ある生物(植物とは限らない)から特定の遺伝子を採取して別の生物に組み込むことにより、組み込まれた生物に、目的とする有用な作用を発現させ、または組み込まれた生物の不都合な遺伝子の働きを抑止させる技術だ。

 昨今、遺伝子組み換え技術は食品などに応用され、除草剤に強い大豆が作り出されるなど、いろいろな種類の作物が作り出されている。しかし、過去に何度か遺伝子組み換え食品による事故が起こったため、安全性を問われることも多く、ニュース、新聞などのメディアでの報道も否定的なものが多い。

 私は、遺伝子組み換え技術に否定的なこの状況はいけないと思う。なぜなら、私たちは、遠くない未来、確実に食糧危機に見舞われるからだ。原因は、爆発的な人口増加だ。また、人工が増えても、地球上で生産できる面積は限られている為、生産できる食料が、人口に対して足りないことが考えられる。この状況を打破するには、遺伝子組み換え技術が必要なのだ。例えば、遺伝子組み換え技術を使えば、通常のトウモロコシよりも成長の早いトウモロコシができるなど、遺伝子組み換え技術が発達すれば、私たちはたくさんの恩恵を受けることができる。しかし、現在の世論は遺伝子組み換え技術に対し好意的でない。

 私は、このままではいけないと思う。なぜなら、世論が否定的だと、遺伝子組み換え技術の進歩にも影響が出てしまうからだ。遺伝子組み換え技術が発達すれば地球温暖化にも歯止めをかけられるのだ。このことを通し、私は、これから遺伝子組み換え技術の有効性を示していこうと思う。

 地球温暖化防止に有効な方法は、大気中に放出されたCO2を固定して、空気中に残らないようにすることが考えられる。CO2を固定する有効な方法は、植物に吸収してもらうことだ。サバンナの10%〜20%を森林化するだけで年間約15億トンのCO2が吸収できると推測される。日本での1990年の温室効果ガス排出量は炭素換算で年間3400万トンといわれているから、いかに大きな効果を生むかがわかる。サバンナを森林化させ、熱帯雨林の再生、砂漠の緑化を実現するには、塩分が多いとか、乾燥しているといった過酷な条件でも生存することができる植物が必要になる。

 しかし、多くの植物は乾燥、塩分に弱い。普通の植物は塩分が多ければ細胞中の水が脱水されて枯れてしまう。海岸に植物が生えないのもこのためだ。
 そこで、遺伝子組み換え技術で塩分や、乾燥に強いキメラ植物を作ればいいのだ。キメラ植物とは2つ以上の系統の異なった細胞から作られる植物のことだ。例えば、みかんは寒い地域では育たないが、寒さに強い遺伝子を見つけて、それを上手に生体細胞に組み込んであげれば寒さに強いみかんを開発することができる。そうした、さまざまな遺伝形質をもたせた植物がキメラ植物だ。

 塩分に強いキメラ植物を作るには、まず、塩に強い植物を探さねばならない。そこで、白羽の矢を立てられたのがマングローブだ。マングローブは淡水と海水が混じる汽水領域に平気で成長することができる。マングローブが塩分の濃い泥地で生育できるのは、海水中のナトリウムイオンを外にくみ出すポンプのようなものをもっているからだ。そのポンプのような働きをする遺伝子を取り出して、ほかの植物に組み込めば、塩分にも強いキメラ植物を誕生させることができる。

 現在、沖縄の西表島から、マングローブを移植して研究し、塩に耐えうる遺伝子が多数発見されている。このまま順調に研究が進めば、海水でも平気で生育できるキメラ植物を誕生させることも夢ではない。さらに、乾燥に強いサボテンの遺伝子を活用すれば砂漠でも生育できるマングローブ=サボテンのようなキメラ植物を作ることができる。それに、空気中の窒素からアンモニア肥料を作れる豆科の植物の窒素固定の遺伝子を組み合わせたら、塩にも乾燥にも強く、肥料のいらないキメラ植物を誕生させることができる。そのキメラ植物を、わずかな雨でもしっかり吸収する吸収ポリマーと共に植えれば砂漠に緑を取り戻すことができる。緑が戻れば、地球上のCO2も減り、地球温暖化も食い止められる。

 砂漠に緑が戻れば、人間の居住スペースも大きくなる。また、砂漠でも栽培できる野菜が開発できれば、今までより多くの面積で、作物を栽培でき、これから来るであろう食糧危機も乗り越えることができる。
 このように、遺伝子組み換え技術はうまく使えば、私たちに多くの恩恵をうけることができる。しかし、世論では、安全性を問われることも多く、敬遠されがちである。敬遠された原因はやはり、遺伝子組み換え食品による事故の影響だろう。これは、ずさんな国や政府の管理が原因だ。遺伝子組み換え食品に対する管理体制がしっかりしていなく、安全性評価もしっかりなされていないのだ。

 現時の安全性審査は、1.審査自身が開発者(輸入者)の任意であり、強制力はない。2.申請者の提出した書類を審査するのみであり、第三者機関による試験ではない。3.組み換えされた植物そのものの摂取試験は実質免除されている。4.組み込まれたタンパク質も急性毒物試験だけ。(長期的、慢性的毒性については免除)。以上のように二重三重のずさんな「審査」となっている。その結果、日本で「安全審査」されていない組み換え作物が出回っても何の期制もなく、現に多くの食品に未審査の組み換え作物が原料として使われている。厚生省はようやく安全審査を法制化し、強制力をもたせるとともに未審査のものは販売できないようにすることを準備しているが、現在の市場は野放し状態だ。また法制化されても1.が改善されるだけで、2.3.4.点は変えない意向のようだ。これでは遺伝情報がどのように変わっているか判らない遺伝子組み換え食品の安全審査としては決定的に不十分だ。

 また、現在の遺伝子組み換えでは、生物の細胞から遺伝子を切り取ることや、生物の遺伝子を合成することはできるようになった。しかし肝心の「組み込み」については、人間は制御できていない。できるのは目的の遺伝子セットを目的の宿主生物の細胞に「潜り込ませる」だけで、その先の「組み込み」は、生物任せだ。遺伝子セットが、宿主の染色体のどこに
入るか、あるいはいくつ入るかは、全部偶然に頼っている。同じ作物と同じ遺伝子セット使っても2つとして同じものは作れない。つまり、再現性がないということだ。「技術」とは、再現性があり、私たち人間が制御可能であることが前提となる。もともと、目的の作物(動物)の遺伝情報(ゲノム情報)、染色体の遺伝子地図もほとんどわかっていないのが現状だ。どこに入ったのかもわからないのだから、元々あった遺伝情報をどのように変化させてしまったかということもわからない。

 このように、遺伝子組み換え技術はまだ、基礎研究がしっかりとできていないというのが現状である。これから、科学的な安全審査の確立と遺伝情報に関する基礎研究の充実をしていかねばならない。また、生産者は生産者側の利益だけにとらわれず、消費者のことを考え、しっかりと安全性を考え、近視眼の商業利用は止める。また、国、政府は早急に遺伝子組み換え食品に対する国民が納得できるしっかりとしたガイドラインを作る。以上のことで、遺伝子組み換え技術に対する世論の目も変わり、遺伝子組み換え技術が大きく進歩できる環境が整うと思う。

 以上に述べたようなしっかりした体制ができれば、遺伝子組み換え技術によって、食糧危機の回避や地球温暖化を食い止めることができるなど、数えればきりのない恩恵が受けられるはすだ。


【参考文献】
知らないと損をする先端技術の大常識
軽部征夫、2001年7月28日、日刊工業新聞社、p135〜136
遺伝子組み換え食品いらない
http://www.no-gmo.org/
ホントはどうなの遺伝子組み換え食品
http://www.fsic.co.jp/bio/