過去の入賞論文
・2016年(第17回)
・2015年(第16回)
・2014年(第15回)
・2013年(第14回)
・2012年(第13回)
・2010年(第12回)
・2009年(第11回)
・2008年(第10回)
・2006年(第8回)
・2005年(第7回)
・2004年(第6回)
・2003年(第5回)
・2002年(第4回)
・2001年(第3回)
・2000年(第2回)
・1999年(第1回)






















































































2002年(第4回)

【努力賞 日刊工業新聞社賞】
誰でも創造性を発揮できる 新しい方法の提案
徳山工業高等専門学校 機械電気工学科
谷村 鉄平

 私は「自由な発想から生まれる、不完全さを持つアイデアが重要である」ということを原則とする新しい創造的活動のプロセスに関する提案をする。

【従来の創造的活動】
 これまでの創造的活動の一般的な作業は、別紙(図1)に示すような作業であった。まず、何かのテーマについて突発的な閃きから「原始アイデア」を考え出す(原始アイデアは自由な発想であることが望ましく、多くの原始アイデアを考えておくとよいだろう)。次に、考え出した原始アイデアを論理的な評価によって「発展アイデア」に仕上げていく。論理的な評価とは、「技術的に可能か」「経済的であるか」「社会のニーズがあるか」などであり、論理的な評価によって原始アイデアは、より現実的で実現可能になるように手直しされていく。また、原始アイデアが論理的な評価によって実現不可能と判断された場合、再び原始アイデアを考えることから始める。つまりこれまでの創造的活動のプロセスは、「原始アイデアを考える段階」と「原始アイデアを論理的に評価する段階」に分けられ、アイデアの完成度を高めていくものであった。

【従来の創造的活動の問題点】
 私はこの創造的活動のプロセスの、「原始アイデアを論理的に評価する段階」に大きな問題が2つあると考える。1つ目の問題点は、原始アイデアを論理的に評価するための知識が大量に必要になる問題である。論理的な評価を行うためには、技術面、経済面、社会面などに精通していなければならず、原始アイデアを論理的に評価するのが困難である場合が多い。こうなると創造的活動のプロセスはスムーズに働かなくなり、作業を大幅に遅らせることになる。2つ目の問題点は、原始アイデアを論理的に評価することで原始アイデアの特徴である「自由さ」「不完全さ」が失われることである。ここでの自由さとはそのアイデアの突拍子さであり、技術面、経済性、社会のニーズなどの外的制約にとらわれない柔軟性のことである。また不完全さは自由さによって生じる技術的問題、経済的問題、社会のニーズ問題などのことである。つまり自由さと不完全さは表裏一体のものであり、自由さを妥協すれば不完全さは無くすことができるのだ。しかし創造性を発揮する上で自由さが最も重要であることは公然の事実である。自由さを持つ発想は新しい価値観を持っている可能性が高い、よって創造的な発想であるには自由さは必要不可欠なのである。ところで、原始アイデアの不完全さが無くなるのは良いことではないだろうか。そもそも原始アイデアを論理的に評価するのは、それの持つ不完全さを無くすためではなかったか。これこそが今回提案する新しい創造的活動のプロセスと深い関係がある。

【新しい創造的活動】
 私が提案する新しい創造的活動のプロセスは、論理的評価を下す力が乏しい学生、主婦などの人々に有効と思われる。新しい創造的活動のプロセスは、原始アイデアの持つ不完全さに注目したものである。これまでの創造的活動は原始アイデアの持つ不完全さを無くすためのものであったが、それは同時に自由さを制約してしまうことが多かった。新しい創造的活動ではその不完全さを持ったまま研究開発を行うというものである。創造的活動者を学校の先生、発展アイデアを優等生、原始アイデアを劣等生に喩えて説明するとよいだろう。先生は優等生を好み、劣等生を嫌う。なぜならば、先生にとって優等生は理解しやすく理の内の存在であり、劣等生は理解困難な理外の存在であるからだ。このことから劣等生の持つ不完全さに先生にも分からない新しいものが隠されているのではないかと予測される。これに先生が気付いて、劣等生の新しいものを引き出してやれれば、その劣等生は以前からは予想できないような光を放つだろう。これは創造的活動においても言えることであり、原始アイデアの持つ不完全さを恐れずに研究開発をして新しいものを引き出せれば、思いもよらない成果が上がることがある。例えば、タイムマシンを作るという発想は技術的に不可能であると思われる、しかしこれの持つ不完全さ(ここでは技術力)を克服してやればすばらしい発明ができるし、また克服できなくとも克服しようとするプロセスの中に思いもよらぬ副産物が生まれることもあるだろう。

【原始アイデアの具現化】
 さて、私は実際に新しい創造的活動のプロセスによって徳山高専2年次の創造演習で「空気チューブ構造体」を考案した。創造演習のテーマは「自転車の改良」である。近年、自転車は排気ガス問題、健康ブーム、コンパクトなサイズによる便利性などで注目を集めている。私は自転車のコンパクト化について考えていき「フレームを空気チューブにする」という原始アイデアを生み出した。空気チューブフレームは空気を抜けば折りたためるし、空気を入れても軽い。ここで空気チューブ構造体の自由さと不完全さを整理すると、自由さはそれまで金属であったフレームに、空気チューブのような柔らかい材料を使用する点であり、不完全さは空気チューブのような柔らかい材料を使用することで、自転車としての強度が大幅に落ちるということだ。私は従来の創造的活動によって空気チューブフレームに論理的な評価を与えようと努力したが、材料の知識、力学の知識などが不足していたために作業が難航した。空気チューブを取り扱う企業に助言を求めたりもしたが、満足のいくような評価をすることができなかった。私は論理的な裏付けなどは全くなしで、空気チューブで立方体を作り、その強度をみることにした。一辺50センチの送水ホースをプラスチック製のジョイントで立方体に組み立て、空気バルブは自転車のものを使用した。自転車の空気入れで空気を入れてやると、空気チューブ構造体は10キログラムほどの椅子を載せてもびくともしなかった。空気を抜けば一辺が空気注入時のおよそ3分の1、体積では27分の1まで折りたたむことができた。人間が乗るには強度が足りないが、空気チューブ構造体自体は自転車のフレーム以外に他の利用法がありそうだという結論に至った。

【新しい創造的活動のプロセスの利点】
 「自由な発想から生まれる、不完全さを持つアイデアが重要である」ということを原則とする新しい創造的活動のプロセスの利点は、学生や主婦のような論理的な評価をするのが困難な人々でも創造的活動を行えるという点と、新しい価値観をもたらす可能性がある点の2点だ。
私は不完全な原始アイデアに論理的な評価を与え発展アイデアを構築する、もしくは原始アイデアを諦めるといったことをせずに製作を行ったにも関わらず、創造的活動を進めることができた。さらに空気チューブ構造体という新たな可能性を見つけることができた。
 従来の創造的活動では原始アイデアを論理的に評価する作業が困難な作業であったと同時に、論理的になりすぎるあまり原始アイデアにあった可能性を潰すこともあった。私の提案する新しい創造的活動のプロセスは「考えたことを試してみることが大切である」言い換えることもできる。原始アイデアを考えたが発展させて現実的なアイデアにできないと頭を抱えるのではなく、原始アイデアを形にしようとすることが重要なのである。原始アイデアを具現化しようとする過程の中で創造性は刺激され、また新たな発見があるのだから。
 私は今回の新しい創造的活動のプロセスがノーベル賞を受賞される田中耕一氏の発明に至るまでのプロセスと共通する部分があると感じた。この新しい創造的活動のプロセスが日本の創造力の向上に役立つことを願う。

参考文献 http://create.mag.keio.ac.jp