理工系学生科学技術論文コンクール
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2014年(第15回)

【最優秀賞 文部科学大臣賞】
科学と社会をよりつなげるには?
  学生による科学コミュニティサイトの提案
筑波大学大学院 生命環境科学研究科 生物科学専攻 修士課程2年
天久 朝恒
天久 朝恒

はじめに
 科学技術の発展は,社会の発展に直結する。そのため最新の科学研究の成果は,科学者のみではなく,一般市民にも正しく伝えられる必要がある。一方,原著論文の内容を理解することは,その研究分野以外の人にとって容易ではない。そのため今日では,最新の研究成果の意義が,新聞,雑誌,テレビ,インターネットなどの幅広いメディアを通じて,社会へと届けられている。
 しかし現状では,最新の研究成果を伝えるメディアが増えたからといって,必ずしも市民へと伝えられる研究成果の数が増えているわけではない。例えば,日々出版される論文の数は膨大であるが,その内容を理解しているのはその研究分野の一部の研究者のみである。その原因として,日々更新される数多くの研究成果をニュースとして取り上げることや,幅広い研究分野を限りのある科学記者によって取り扱うことに限界があることが挙げられる。
 私は,より多くの研究の意義が社会に伝われば,将来の科学技術の発展につながると考えている。問題は,科学と社会をつなぐきっかけを「だれ」が担い,「どのように」科学の研究成果を伝えるかということである。

提案の概要
 その問題を解決するために私は,「学生」が主体となって最新の科学研究の成果を伝えることが重要だと考える。具体的な行動案として,インターネットを利用した「科学コミュニティサイト」の設立を提案し,学生が自ら選んだ論文の意義を一般市民に伝えることによって,社会が科学をより理解できる環境を目指す。

なぜ学生が主体となって科学の研究成果を伝えるのか?
 先に述べたように,様々な分野から出版される数多くの論文の成果を,一般市民へと伝えることは難しい。その問題を解決するために私は,「学生」が主体となって,行動するべきだと考える。なぜなら,全国の理系学生は,それぞれが自分の研究テーマまたは専門分野をもっているため,幅広い研究分野をカバーできるからである。生命科学分野を例にとっても,再生医療のために幹細胞を研究する学生もいれば,細胞分裂のメカニズムを解明するために酵母を研究する学生もいる。それぞれの研究分野の成果は,重要な科学的意義や将来社会に役立つ可能性もっている。しかし多くの場合,その可能性を理解しているのは,その分野の研究者や学生のみである。研究者よりも圧倒的に数が多い学生は,数多くの論文の成果を一般市民に伝える力をもっている。さらに,多くの論文の成果を読むことで,学生は自らの研究分野を深く知るきっかけとなる。  
 では,学生はどのように最新の科学の研究成果を一般市民に提供すべきか?私はその1つの方法として,インターネットを利用した「科学コミュニティサイト」を提案する。

科学コミュティサイトによってどのように研究成果を伝えるか?
 学生が科学の研究成果を伝えるために,インターネットは適している。なぜならインターネットの利用は,紙媒体と比べ,制作にかかる時間やコストの面で優れているからである。さらに今日ではソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の発達で,個人による情報の発信や収集が容易になっている。一方,個人が情報を発信しても,分散した情報を収集することは,読み手にとって労力がかかる。その解決策として私は,体系的に情報のまとまった「科学コミュニティサイト」の設立を提案する。
 私が提案する「科学コミュニティサイト」の目的は,最新の論文を元に,その成果や意義を一般市民へと伝えることである。「コミュニティ」とは,ある管理者が記事を作成するのではなく,全国の学生がユーザーとなり記事を作成できるということを意味する。それぞれの学生が,自らが選んだ研究成果を記事にすることで,幅広い研究の成果を,より多く一般市民へと伝えることができる。さらに,それぞれの学生が記事を投稿する「コミュニティ」は,体系的にまとまった記事を含むため,受け手である一般市民が,より幅広く,より深く科学の成果を理解することができる。
 では,一般市民が最新の研究成果を理解するためには,どのようなサイトを作成すべきだろうか?私は,科学コミュニティサイトの作成にあたって注意すべき点を,以下のように挙げる。

1.わかりやすいフォーマットの指定
 科学の研究成果を伝える記事を作成するために,それぞれの学生は,科学論文をひとつ選択する。その際,研究成果を一般市民にわかりやく伝えるために,記事の基本的な流れとなるフォーマットをあらかじめ指定する。具体的には,それぞれの記事は「成果のポイント」「現在までの問題点」「今回の研究結果」「将来への展望」を必ず含むこととする。特に「成果のポイント」は,最も大切な研究成果の意義を読み手に伝えるために重要である。「将来への展望」もまた,科学の成果が実際に社会にどのように役立つかを,一般市民に伝えるために重要である。なぜなら多くの一般市民の興味は,その研究成果が自分たちの生活にどのように関わるのかという点にあるからである。

2.体系的にまとまったサイトの作成
 全国の学生が論文を選ぶと,取り扱う研究分野が幅広くなる。そのため,研究分野別にカテゴリー分けを行うことによって,様々な記事を体系的にまとめる。一般市民により多くの研究成果を知ってもらうために,それぞれ記事には「関連した研究」を表示させる。加えて,読み手の興味の幅を広げるために,サイトのトップページに「新着記事」を表示したり,アクセス数の多い「人気記事」をランキング形式で表示したりする。このように1つのサイトに記事を体系的にまとめることによって,読み手が情報を収集する手間を低減するだけでなく,読み手の興味の幅を広げ,より深く科学を知ってもらうことができる。

3.学生が相互に磨きあえる環境の構築
 一方,文章書きのプロではない学生が記事を作成することは,間違った情報を一般市民へと伝える原因にもなる。その解決策として,記事にはコメント欄を設け,それぞれの学生や読み手が質問したり,間違いを指摘したりできるようにする。そのため,間違った情報を載せてしまっても,お互いに確認し合うことで修正を加え,よりよい記事を作成することができる。
 学生が主体となって論文紹介の記事を作成することは,一般市民へと科学の成果を伝えるだけでなく,学生自身が研究を深く理解するよい機会となる。なぜなら,論文の内容をわかりやすく伝えるためには,その研究をよく理解する必要があるからである。さらに,自分の研究の意義を伝えること技術は,就職活動や論文でも欠かせない能力である。また,幅広い分野の研究成果が体系的にまとまっていることは,学生自身の勉強にも有益である。

5.おわりに
 本稿では,学生主体の科学コミュニティサイトが,科学研究の意義を一般市民に伝える上で大きな可能性をもつことを述べた。私は,研究成果の意義をその分野内のみに留めるのではなく,一般市民へと伝えることで,社会の意見を科学にフィードバックできると考える。そのため,より多くの研究成果の意義が一般市民に伝われば,社会の発展のみならず,さらなる科学の発展にもつながるのではないだろうか。
 学生が主体となり科学研究の成果を伝える場は,日本の科学技術の将来を担う学生が,知識を共有し合い,相互の能力を磨きあう場にもなる。たとえ学生一人の取り組みは小さくても,その力が合わされば,科学技術の発展のための大きな力となる。

参考文献
[1]「文部科学省」 科学技術理解増進と科学コミュニケーションの活性化について http://www.nistep.go.jp/achiev/ftx/jpn/mat100j/pdf/mat100j.pdf
[2]「科学技術振興機構」ソーシャルメディアの普及が科学研究にもたらす変化 http://scienceportal.jst.go.jp/reports/launchout/20120120_01.html